空中キャンプ

2012-12-31

2012年の映画をふりかえる/結果発表

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(写真は「ふりかえる」イメージキャラクターのオリーヴさんです)

みなさんこんにちは。このブログを書いている伊藤聡ともうします。すっかり寒くなってきましたがお元気ですか。おもえば人生つらいことばかりですが、マヤ文明の予言によれば今年の12月21日で地球は滅亡すると言われており、この予告された死、ディザスターの危機をかろうじてくぐり抜けた私たちが生きているのは、おまけの時間、いわば余生です。誰もが12月21日に一度死んでいるのですから、ここはひとつ開き直って、今後は適当かつ雑に、リラックスしながら生きていきたいものですネ。

えーと、何の前置きが自分でもよくわかりませんでしたが、毎年恒例となっています「ふりかえる」企画の結果を発表します。いい映画ばかりですので、たのしい年末年始のDVD鑑賞の参考にしていただきたいとおもいます。このような質問内容でアンケートを募りました。

  1. 名前/性別/ブログURLもしくはTwitterアカウント
  2. 2012年に劇場公開された映画でよかったものを3つ教えてください
  3. 2で選んだ映画のなかで、印象に残っている場面をひとつ教えてください
  4. 今年いちばんよかったなと思う役者さんは誰ですか
  5. ひとことコメント

今回の回答者は181人でした。回答いただきありがとうございます。大量にレスポンスいただきました。個人的にも、今年のベスト10作品、全て劇場でリアルタイム鑑賞できていたので、主催者としてひと安心でした。結果には大納得、好きな作品ばかりの魅力的なランキングです。では、2012年度の投票数ベスト10について、10位から順に見ていきたいとおもいます。

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『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
前2作のエンターテインメント路線から、いきなりの思念的、抽象的展開! 個人的にはエヴァというより、なぜ庵野秀明という人はこんなにおもしろいのか、という視点でしかエヴァを見ていなかった自分にあらためて気づきました。これだけの人材、製作期間、バジェット、周囲の期待等を背負って、あえてこの作風を通すのって勇気ですよ。つねに気が弱いわたしは、ここまでみずからの意志をつらぬける庵野さんに尊敬の念しかないです。アクションシーンのクオリティにも興奮しました。10位は同票で3作品あります。

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『人生はビギナーズ』
マイク・ミルズ新作、死の直前にとつぜんゲイであることを宣言し、自由に生きると決めた父親と、その息子を描いた作品です。かわいい犬ちゃん映画でもあり、美しい映像も印象的です。家族って何だろうねえと考え直さずにはいられない1本です。奥さんのミランダ・ジュライからの影響も垣間見える作品ではないでしょうか。

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『別離』
イラン版『クレイマー、クレイマー』とでも呼ぶべき、人間ドラマの傑作! わたし自身も大好きな映画です。すごい迫力でした。そして、認知症のおじいちゃん=神、という劇的すぎる構図もすばらしい。この映画がベスト10に入るっていいなァ。すでにソフト化もされているので、ぜひ見てみてくださいね。何しろこの世でいちばんおもしろいのは人間関係であるとあらためて発見させられる1本でもあります。

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『おおかみこどもの雨と雪』
9位は細田監督の新作アニメでした。わたしの泣きポイントは、ついに姉弟の決裂、方向性のずれが確定的になってしまう、部屋のなかでの取っ組み合いシーンでした。あんなに仲がよかったふたりが、ついに別々の道を歩まなくてはならなくなってしまう──。細やかな生活の描写や、本棚に並べられるさまざまな本などにもつい目が行ってしまうすてきな映画だったとおもいます。やや人によって好き嫌いが別れる可能性があるとは思いますが、クオリティの高さはまちがいなく、個人的には記憶に残るとてもいい作品でした。

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『ファミリー・ツリー』
アレクサンダー・ペイン新作。この監督ならではのビターな味わいと、苦みをうまく中和させるハワイの風景の解放感というコンビネーションがとてもよかったとおもいます。物語そのものは陰惨といってもいいほどにつらい場面を含んでいるのですが、結果的にはポジティブな気持ちで見終えることができるのも魅力ではないでしょうか。

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『アルゴ』
7位はベン・アフレック新作です。イランから人質を救出するために、存在しないフェイク映画をでっち上げるという実話をベースにした作品。それにしても「フェイクの映画」というのは奇妙なもので、まずもって映画そのものがすべてフェイクなのだから、いわばデス・スターだってフェイクだし、ダース・ベイダーだって存在はしないわけであり、物語が後半へ進むに連れて、この映画そのものが巧妙なフィクション論として二重の意味を持ち、機能しているところがスリリングなのではないでしょうか。追跡劇、逃走劇としてのおもしろさが「これでもか」とばかりに強調されているのも、エンターテインメントとしての機能性に通じていてすばらしいですね。

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『アベンジャーズ』
4位は、同票で3作品です。6位から4位が同率ということですね。まずは『アベンジャーズ』。もうあらすじとかはみなさん知ってると思うので割愛しますが、何しろハルクが最高だった。わたしはハルクの魅力に圧倒され、アベンジャーズのなかでいちばん好きなのもハルクになりました。変身するのもいいし、叩いたり暴れたりするだけという攻撃のシンプルさもいい。まずもって「怒ると変身してしまう」という基本設定や、緑色の肌というあたりにもぐっときます。あのズボンは伸縮自在なのかも知りたい。変身後、決まって上着は破れるけど、ズボンはわりとちょうどいい感じでフィットしてるんだよ。みなさんもこの映画でハルク愛を育んでほしいです。

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『裏切りのサーカス』
カッコいいスーツを着たカッコいい男たちが出てくるだけで、たいてい映画はおもしろくなるものと相場が決まっていますが、そこにくわえて異様なまでにスタイリッシュな映像美が貫かれた本作はとてもすばらしいクオリティでした。また、銃弾を受けた男の、まるで涙のように流れる血の描写にも、劇場で「ああっ」と声を出してしまいました。またこの映画のカメラがさ、横に移動したり、後ろにすっと引いたり、いろいろとカッコいい動きをするのです。そのあたりのスタイリッシュさにも注目してほしいですね。

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『007 スカイフォール』
そしてここまでが4位です。『007 スカイフォール』。サム・メンデスに監督交代、めまいのするような映像美であたらしい007を再構築した作品です。わけても中国のシーン、深夜のビルで格闘するふたりの男を照らす電光掲示板の灯り、そこで揺れるくらげのイメージに圧倒されました。危険でセクシー、官能的な映像! と興奮する間もなく、次のマカオのカジノへ乗り込むボンドの船がまた端正に、美しく撮られていること…。この作品に関しては、宇多丸さんの評がとてもすばらしいので、聞いてみてください。まだ劇場公開中の新作ですが、上位入りも納得のクオリティです!

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『サニー 永遠の仲間たち』
3位は韓国映画の『サニー 永遠の仲間たち』でした。泣きました。まず、主人公イム・ナミの子ども時代に泣けました。いろんなことが普通なんです。髪型やヘアスタイル、雰囲気など、どのクラスにも必ずひとりはいるタイプの子を探してきて、ちゃんと主役としての存在感を持たせ、感情移入させるとはなにごとだ、という驚きでした。転校した子がしだいにクラスになじみ、友人ができ、失恋を経験し──といった経緯が、韓国史と重ねられつつ描かれている点もすばらしかったです。非常にファンの多い作品ですので、未見の方はぜひご覧になってみてください。

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『ドライヴ』
2位は、ニコラス・ウェンディング・レフン監督の『ドライヴ』でした。意外! フェティッシュな興奮に満ちた映画で、見る人を選ぶものとおもっていたので、これが2位になるというのはなかなかユニークなのではないでしょうか。犯罪者の逃がし屋をする、天才的運転テクニックを持ったドライバーを、ライアン・ゴズリングが演じています。これ、説明むずかしいんだよなあ。作品の官能が、音楽の使われるタイミングだったり、映像のフェティッシュだったり、80年代感だったりといった、言語化しにくい細部から立ち上がる構造になっているので、見てもらうしかないのですが、ある種カルト的でもあるこの作品がここまで上位に来た、というのは実におもしろいことなので、未見の方は試しに見てみるとすごく新鮮だとおもいます。あまり見たことのないタイプの映画かも知れません。

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『桐島、部活やめるってよ』
1位はやはり『桐島、部活やめるってよ』でした。票数からしても圧倒的、まさに<桐島 rules!>な1年だったわけです。わたしも劇場へ4回行き、桐島桐島とうわごとのように言いつづけ、しだいにありとあらゆるものごとが桐島に見えてくるという、わけのわからない状態でひと夏をすごしました。日本映画史に残り、今後の学園映画、青春映画の新基準となるメルクマール的作品であることに間違いはなく、そうした劇的な作品が世に放たれる瞬間を目撃できたという興奮を味わえただけでも本当に満足です。およそ悪い部分が見当たらず、何度見ても発見があり、学校がひとつの完結した世界として描かれている点もすばらしい。来年2月にソフト化されますので、未見の方はそれまで待ってぜひ見てほしいです。桐島最高っ! 神木くん大好きです!

ということで、2012年の映画をふりかえるの順位はこちらです。桐島が強すぎる。(DVDの欄は、現時点でソフト化されているかどうかです)

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そして、今年いちばん人気のあった俳優は、マイケル・ファスベンダーさんでした。いい男だ。『SHAME』でファスベンダーの男性器を見たとき、男のわたしですら、ちょっとトクした気になりました。ダニエル・クレイグやライアン・ゴズリングらを抑えての受賞です。

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最後に、もっともふつうな感覚を持つ方に送られる「空中キャンプ賞」ですが、昨年の受賞者である佐藤太郎(仮)さん(@s_t_k0)が2年連続の受賞ということになりました。(佐藤さんのブログ「荒野に向かって、吼えない…」)。しかしここまでふつうを貫く佐藤さんとはいったいどんな人なのでしょうか。あまりにふつうすぎる佐藤さんからは、個性、独自の視点、主体性といったものがすっぽり抜け落ちているようにしか見えませんが、そんな佐藤さんのブログはすごくおもしろいので(わたしも読んでいます)、みなさんもこの「Mr. アベレージ」こと佐藤さんのブロクを読んでみてくださいね。それでは来年もまたたのしくすごしましょう。

かしこ
伊藤聡拝

*ランキング集計をミスしてしまい、『ファミリー・ツリー』と『人生はビギナーズ』が抜けてしまっていました。本当に失礼しました。アレクサンダー・ペイン監督、マイク・ミルズ監督ごめんなさい。追記し、ランキングを訂正しました。(2013/1/2追記)