手塚治虫のもう一つの顔

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「空を越えて ラララ星の彼方」東京下町の家、白黒テレビの画面で腕を振り回しながら水中に潜るアトム。幼いころの記憶の最果てである。「鉄腕アトム」など数々の名作を産み出した手塚治虫は実は大人向けの漫画も手掛けていた。巨匠の一面、名作の舞台裏を担当編集者が明かす。著者の峯島正行氏は大正十四年に横浜市に生まれ、早稲田大学卒業後、実業之日本社に入社したが、同社刊「週刊漫画サンデー」編集長として手塚治虫と苦楽を共にした。その後、有楽出版を創業し、代表取締役となる。評者は同社発行「歴史・時代小説事典」の執筆者の末席に名を連ねたこともあったが、監修の労をとられた尾崎秀樹先生が会長を務められた「大衆文学研究会」にて峯島氏とのご縁が生じた。同会神奈川支部の代表も務められるなど旺盛なおかつ多彩な活動を展開された峯島氏は平成二十八年十一月、今回紹介の著書原稿完成の直後に逝去された。厚恩に深謝しながら合掌。
それにしても、ロボットが活躍する人工知能時代の到来に評者は楽観的になれないのはなぜなのか?アトムが運んでくれた夢と重ね合わせることがどうしてもできない。(本の博物館館長代理・菊池道人)