カオスの縁 ――無節操日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-05-24 密林づくし

 本日はアマゾンへのリンク数が通常の3倍です(ぇ

[] 東方作品を楽しむためのブックガイド 紅魔郷06:00  東方作品を楽しむためのブックガイド 紅魔郷編を含むブックマーク  東方作品を楽しむためのブックガイド 紅魔郷編のブックマークコメント


 一見、お気楽なシューティングゲームである東方シリーズですが、設定やスペルカード名などにまで踏み込んでみると、意外に深く、いろいろなジャンルの知識が作品内に引用されていたり、取り入れられていたりします。

 その辺が把握できると、東方作品をより楽しむことができるのではないかと思い、試しにブックガイド的なものを作ってみることにしました。

 初心者でも気軽に読めて、今まで以上に東方に親しめるような、そんなブックガイドにできたらと思います。


 とはいえ。最初に宣言しておきますが、私一人ではとてもカバーしきれません。

 ZUN氏は歴史、民俗学から天文、宇宙工学、物理学に至るまで、かなり幅広い知見を作中に込めています。

 それらを十全に押さえるのは少々私の手に余るので、できる範囲で作って行きたいと思います。

 どなたか、より詳しい方にさらに充実したブックガイドを作っていただける、そのきっかけにでもなれれば幸いと思っています。


 と、能書きはここまで。

 それでは最初に、『東方紅魔郷』のブックガイドを始めてみたいと思います。


・『東方求問史紀』


東方求聞史紀 ?Perfect Memento in Strict Sense.

東方求聞史紀 ?Perfect Memento in Strict Sense.


 まずは基本中の基本、東方の世界観を押さえるという事で、ここから。

 幻想郷の設定なども一部わりと独創的な部分がありますし。またスペルカードというこの世界の基本ルールについて眺めておくと、ゲームを楽しむのが今までよりもう少し楽しくなるかもしれません。




・『まどろみ消去森博嗣


まどろみ消去 (講談社文庫)

まどろみ消去 (講談社文庫)


 ステージ1のボスルーミア魔理沙との会話の元ネタ。

 また、同じ作者のデビュー作『すべてがFになる』には、「レッドマジック」という名前のコンピュータOSが登場します。もっともこれについては、ZUN氏は直接のインスパイアではないとコメントしていたそうですが。

 1990年代後半の新本格ミステリ業界で活躍していた作家さんの一人です。この時代のミステリは、科学・文学民俗学・神話学・人類学・オカルトなどの知識を貪欲に取り入れた衒学的な作品が数多く発表され、エンタメの最先端を走っていました。

 で、実は現在、いわゆるゼロ年代に活躍している若手の作家さんやゲームクリエイターさんの中には、この時代のミステリの影響を受けている人たちが少なくないんじゃないかと思います。ちょうど、一番貪欲にクリエイターとしての引き出しを増やしていた時代が重なるんじゃないかなと。

 ZUN氏も例外ではないようです。まあこの件については、妖々夢のブックガイドでまた改めて……。




・『妖精学入門』井村君江


妖精学入門 (講談社現代新書)

妖精学入門 (講談社現代新書)


 ステージ2で、チルノをはじめ立て続けに出てくる妖精について、まあ「そもそも妖精って何なのさ」ってあたりから知ろうと思うなら、この方の著作から入ってみるのも良いんじゃないでしょうか。妖精関係の著作で有名な方です。

 まあ、幻想郷の妖精の設定はまた少し違ってくるのですが。一口に妖精と言っても結構色々な連中がいたりするので、面白いかも知れません。




・『図説日本未確認生物事典』


図説・日本未確認生物事典

図説・日本未確認生物事典


 ステージ3のボス紅美鈴は「龍」と書かれた帽子をかぶっています。

 また、虹という字のついたスペルカードを使用してきますし、実際その色鮮やかな弾幕は強く印象に残ります。

 実は、虹というのは龍の一種として古代中国では語られていました。

 そんなわけで、私の知る限りで「龍の種類」を一番手っ取り早く参照できる本はこれだったり。怪しげなタイトルですが、結構きちんと文献にあたって調べられた本です。龍の他にも、人魚だの狐の怪だのといった日本の幻獣っぽい伝説は大体これで把握できます。天狗や河童、鬼なんかも押さえられてますし、東方キャラのルーツを探るにも悪くない本です。

 まあ、結構昔の本なんで、現在どこも品薄みたいですが。





・『神秘学の本』



 ステージ4のボスパチュリー・ノーレッジは魔法使い。それも結構本格派です。

 天体の運行や、水銀などの魔術に馴染み深い要素がスペルカードの中に散見されますし、エキストラではそのものズバリ「賢者の石」なんてスペルカードも使ってきます。

 やはりここは、西洋魔術、それも錬金術や占星術などのオカルト関係に目配せしておきたいところ。

 で、この学研の「ブックス・エソテリカ」シリーズは、宗教や神秘学、オカルト関係の入門書としてはかなり人に薦めやすいシリーズです。要点は押さえてあるし、図版も多いし。変にスピリチュアルは方向に脱線したりせずに、あくまで「資料」として読めます。

 何より、オカルトな部分に「触れた」ような気にさせてくれる、ちょっと秘密めいた雰囲気が楽しかったりします。

 ここを出発点に、パチュリーが入り浸っている「魔道書」の世界に足を踏み入れてみるのも一興、かも?





・『ジョジョの奇妙な冒険』第三部


ジョジョの奇妙な冒険 (8) (集英社文庫―コミック版)

ジョジョの奇妙な冒険 (8) (集英社文庫―コミック版)


 言わずと知れた、咲夜さんスペルカードの元ネタ。ルナティックではそのものズバリ「ザ・ワールド」というスペルカードを撃ってきたりしますしね。また、最終ステージでは、レミリア様と魔理沙ジョジョ第一部での会話のパロディを繰り広げたりもしています。

 しかしそれだけではなく、この『ジョジョ』第三部は、いわゆる「能力バトルもの」の文法を確立した作品でもあり。1キャラにつき一つの「短いセンテンスで明文化できる特殊能力」を持ち、互いにその能力を駆使して戦うという形を広く一般に浸透させたのは、ジョジョの存在が大きかったんだろうなと思います。そして、各キャラクターが「○○する程度の能力」を持っている東方の世界観も、このジョジョの末裔の一つと言えるかも知れません。

 まあ、その辺を抜きにしても、この第三部は神がかってるとしか思えない面白さを持ってるので、一読しておいて損はないでしょう。未読の方は是非。





・『吸血鬼ドラキュラ


吸血鬼ドラキュラ (創元推理文庫)

吸血鬼ドラキュラ (創元推理文庫)


 言わずと知れた吸血鬼ものの古典。某英国国教会ヘルシングインテグラ女史も「詳しくはブラム・ストーカーを読め」と太鼓判を押す名作ですね(えぇ〜

 無論、レミリア・スカーレットのキャラ造型にも、一般的な吸血鬼像が下敷きとしてあるはずなので、この辺りから入ってみるのも悪くないかと思います。

 また、東方文花帖でのスペルカードレミリアストーカー」は、この作者ブラム・ストーカーの名前が元ネタなんじゃないかという話。決してレミリア様が誰かをつけまわしてるわけではないそうです。





・『吸血鬼幻想』


吸血鬼幻想 (河出文庫 126A)

吸血鬼幻想 (河出文庫 126A)


 レミリア様がハード以上で使ってくるスペルカードの名前ですが、同じ名前の本がこちら。恐らくこれが元ネタなんじゃないでしょうか。

 種村氏の文章は、多少読書慣れしていないと読みにくく感じるかも知れませんが、逆に慣れてくるとこの妙に隠微な感じの文体や、本全体の雰囲気が癖になってきます。いくつか吸血鬼関係の本を読んだ後、さらにその奥深い世界に触れてみたい人向け。




・『そして誰もいなくなった』



 多分、世界で一番有名なミステリ小説のひとつなんじゃないでしょうか。アガサ・クリスティ古典的名作です。

 紅魔郷エキストラ、フランドール・スカーレットテーマ「U.N.オーエンは彼女なのか?」はこの小説を元につけられたタイトル。作中にU.N.オーエンというフレーズが出てくるんですね。またスペルカード「そして誰もいなくなるか?」ももちろんこのタイトルから。

 作品としても、最初から最後までものすごく綺麗にまとまった、芸術品みたいなミステリです。私にとっては、謎が魅力的すぎて解決編を読むのがもったいない、とまで思ったミステリはこれだけでした。




マザーグース(1)』


マザー・グース1 (講談社文庫)

マザー・グース1 (講談社文庫)

マザー・グース2 (講談社文庫)

マザー・グース2 (講談社文庫)

マザー・グース3 (講談社文庫)

マザー・グース3 (講談社文庫)

マザー・グース4 (講談社文庫)

マザー・グース4 (講談社文庫)


 紅魔郷エキストラのもう一つのモティーフが、このマザーグース魔理沙でクリアすると、彼女が歌ってくれたりします。

 もともと、上の『そして誰もいなくなった』でもこのマザーグースの一つ「十人のインディアン」がテーマの一つなので、そのつながりで出てきたものと思われます。

 また、東方作品以外でも、マザーグースインスパイアされたエンタメ作品は多いので、基礎知識として持っておくと、いろんな小説漫画、映画を読んだり見たりする時により楽しめるかと思います。

 本は、お求めやすい文庫版をチョイス。



 そんな感じで、紅魔郷のブックガイドでした。

 また忘れた頃に、妖々夢編以降もやりたいと思います。

[] 江戸の怪異譚 06:00  江戸の怪異譚を含むブックマーク  江戸の怪異譚のブックマークコメント


江戸の怪異譚―地下水脈の系譜

江戸の怪異譚―地下水脈の系譜


 久しぶりに、エキサイティングで楽しい研究書を読みました。楽しかった。


 まあ、仕事として、学問として書いたであろう本に対して、その評価軸が「楽しかったかどうか」っていうのは果たして正しいのかどうか、という気もしますが。

 ま、その辺は在野……っていうのもおこがましいですね、アマチュアの強みってところで。楽しくない学問なんてノーサンキュー、って言えるんですから、良い身分です(ぇ

 それに、結局本当に明晰な学者が書いた研究は、何だかんだで面白いもんですし。


 というわけで、江戸時代の怪異系説話集について分析・評論した本であります。特にこの方のホームグラウンドは仏教系の唱導話材などで、そちら方面からのアプローチで色々と目新しい切り口が浮き上がってきて、なかなか鮮やかでした。

 惜しむらくは、私の方にもっと江戸時代の随筆集や説話集関連の基礎知識があれば、もっと楽しめたのにな、って辺りですが。ま、こればっかりはしょうがない。


 特に、江戸時代後期に流行ったという弁惑もの(狐狸妖怪のしわざと思いきや、実は人間の仕掛けた詐欺行為だった、という筋の話を集めた奇話集)については、ほとんどその内実を知らなかったのでかなり勉強になりました。そうした流れも含め、時代が下るとともに、そういうお化けの話にも科学的な分析の視点が向けられていったらしく。

 井上円了がやっていたような怪異の科学的分析も、明治時代になっていきなり芽生えたんじゃなくて、江戸時代からしっかり萌芽はあったんですねぇ。


 また、この本の中盤では、那須野ヶ原の殺生石や、火車などの、妖怪愛好家(笑)にはお馴染みの話題について結構深く言及されてて、その辺も読みどころでした。

 実質、うちのブログで「お勉強」企画を思いついたのも、この辺りが久しぶりにすごく面白く読めたからなわけで。

 うん、やっぱ楽しい。


 そんなわけで、最初から最後まで堪能しました。約6000円ほど出した甲斐もあったってもんです。

[] 図説・旧約聖書の歴史と文化 06:00  図説・旧約聖書の歴史と文化を含むブックマーク  図説・旧約聖書の歴史と文化のブックマークコメント


 発行は1973年、わーお私が生まれるずっと前だ。

 神保町の古本祭りでいつぞや買った本です。


 この手の古い本を読む時には、くれぐれも注意が必要です。文中で書かれている事が、現在ではもう通用しないというケースがありうるからです。

 たとえば、文中で「現存する中で最古」と書かれている場合も、この本の発行後に新発見でもっと古いものが見つかってるかもしれない、とか。

 もしくは、「現在はこの説は否定されている」といった事もあります。


 大学時代、ちょっと歴史ものの小説を書いた時に、参照した本がちょうどそんな感じで。たまたま国語表現の先生に見せたら、「今はこの本で述べられてる説は否定されてるよ」って言われてショックを受けたという苦い経験があったりなかったり。


 しかし、そこにさえ気をつければ、こうした本を読んでみるのもまた一興。


 ていうか、私この本で、「肥沃な三日月地帯」ってどこを指すのか、初めて知りましたよ(えぇ〜

 言葉は知ってたんですけどね。地図上でどこの事だか全然把握してませんでした。

 この手の歴史を学ぶ場合、必ず地図と照らし合わせながら勉強すべきなんですが、どうも私にはそういう習慣がとうとう身につかなくて。相変わらずこんな体たらくだったりします。分かっちゃいるんですがね、どうも。そんなだから西洋史苦手なんだけれども。


 基本的には、旧約聖書で語られている時代の美術や、考古学関係の話題をダイジェストで図版多めで紹介してくれてる本で。解説も行き届いていたし、丁寧なつくりの本でした。


 トピックとして面白かったのは――イギリスで一時、宗教改革に対するカトリック側の反動で、「公然であろうと、ひそかにであろうと、聖書を読むことが禁止された」という記述があって、びっくりしました。キリスト教徒が、聖書読むの禁止するなんて事もあったんですねぇ。一介の日本人としては、キリスト教徒なんてどの宗派でも聖書はいつでも聖典あつかいなんだと思ってました。へぇ〜へぇ〜へぇ〜。


 そんな。まぁ、やたら古い本なんで、このブログをお読みの方がこの本を手にする機会も早々ないかとは思いますが。一応、良い本でしたよ、とここに書いておきます。

電脳玩具職人そーご電脳玩具職人そーご 2008/05/25 00:55 ジョジョ3部は某宗教の影響で
しばらく刷られない可能性がでてきましたな。
アラビア語の資料がなかったからすぐに手に入るようなものを
こぴぺしたんだろうけど。

zspherezsphere 2008/05/26 11:58 なんか色々あるみたいですねぇ。
まああまり詳しく追っかけてはいませんが……。
ま、見たところ一過性のものになりそうですし。そんなに心配してませんが。