「夢を追える」、両足義足選手が喜び

 時事、「夢を追える」、両足義足選手が喜び=北京五輪へ道開ける−陸上男子より。

2008/05/17-10:37 「夢を追える」、両足義足選手が喜び=北京五輪へ道開ける−陸上男子


 【ロンドン16日時事】スポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定により、北京五輪出場の道が開けた両足義足の男子陸上選手、オスカー・ピストリウス(21)=南アフリカ=は16日、「スポーツにとって意義ある日になった。自分の人生でも、最良の日の一つになった。五輪に出場するという夢を追うことができる」と喜びを語った。
 昨年11月にドイツの大学で行われた調査結果を基に、国際陸連(IAAF)はピストリウスが使用する義足が人工的な推進力を与えると判断、健常者とのレース出場を禁止した。一度は五輪の扉が閉ざされたかに見えたが、あくなき思いで行った提訴が実った。
 「世界」に最も近い400メートルの自己ベストは46秒56。同五輪参加標準記録の45秒55にはまだ届いてないが、既にトップ選手が参加する一部の大会から招待を受けているという。「挑戦を続け、五輪の出場権を獲得したい。北京が駄目でも、4年後のロンドンで」と意欲を示した。 (了)


 以前、義足のランナー北京五輪出場ならずというエントリーで、ピストリウスの話題をとりあげた。そこで、次のような感想を述べた。

 障害のない選手から脅威とされるようになるとは、義足の進歩もついにここまできたか、という印象を強く持ちます。


 もちろん、義足をつけるだけで誰でも速く走れるわけではありません。アスリート、ピストリウスの鍛錬のたまものがあったからです。同時に、義足メーカー、義肢装具士、そして、リハビリテーションスタッフなどチームサポートも重要な因子です。


 「夢を追うことができる」、心に響く言葉である。身体障害者スポーツにとって、記念すべき一日となった。

後期高齢者診療料も見直しの対象

 中国新聞終末期相談支援料を再検討 後期高齢者医療制度で厚労省より。

終末期相談支援料を再検討 後期高齢者医療制度厚労省 '08/5/17


 後期高齢者医療制度長寿医療制度)で厚生労働省は十六日、回復の見込みが難しい終末期の治療方針を患者や家族と医師らが話し合って文書にまとめた場合、医療機関に診療報酬二千円が支払われる「終末期相談支援料」について、厚労相の諮問機関、中央社会保険医療協議会中医協)で再検討してもらうことを決めた。


 野党や難病患者団体に「延命措置の中止を強制されかねない」として廃止を求める意見もあることを考慮した。二十一日に中医協総会を開き、見直しも含め検討をあらためて委ねる。診療報酬は中医協の答申を経て四月に改定されたばかり。二カ月足らずで個別項目を再検討するのは異例だ。


 併せて、高齢者のかかりつけ担当医(主治医)としての継続的な医学管理に対し月六千円の定額報酬が支払われる「後期高齢者診療料」についても、地域の医師会で反発の声が上がっており、再検討の対象とする。


 厚労省はいずれの見直しにも否定的だが、中医協の判断によっては廃止の可能性もある。中医協は(1)健康保険組合など支払い側(2)医師会など診療側(3)学者ら公益代表_で構成、委員は二十人。


 終末期相談支援料は「在宅診療に熱心な医師らを評価しようと導入した」(厚労省)とされるが、民主党は「終末期の医療費抑制が目的」と批判。舛添要一厚労相は十五日の参院厚労委員会で「意図は善意でも、終末期医療への取り組みが後退する危険性がある。見直すべき点は調査を踏まえ改革する」と答弁した。


 疾患別リハビリテーション料算定上限問題に引き続く、異例の診療報酬再検討が中医協で始まる。後期高齢者終末期相談支援料だけでなく、後期高齢者診療料も見直しの対象となっている。総選挙次第では、後期高齢者医療制度廃止法案が可決される可能性が高くなる。小手先の見直しだけではどうしようもないところまで事態は進んできている。

医療崩壊に関する講演会のはしご

 医療崩壊に関する講演会のはしごをした。
 一つは、第20回艮陵同窓会における李啓充先生「医療変革の時代を超えて 医療崩壊の危機をどう乗り越えるか」、もう一つは宮城県保険医協会での大村昭人先生「医療立国 − 医療費増額が医の荒廃を救う」だった。


 李啓充先生の講演は、「市場原理と医療  米国の失敗を後追いする医療改革」がベースになっている。「出所明記しての転載転送歓迎」となっており、今後活用していきたい。


 前半は「公」を減らすという財界の主張の危険性についてだった。小さな政府の問題点、特に国民負担率という言葉に秘められている欺瞞について詳細なデータをもとに主張されていた。この部分は、週間医学会新聞に連載されている「続 アメリカ医療の光と影」がもとになっている。


 後半は、「民」を増やす、ということの危険性についてだった。ここでいう「民」とは民間医療保険や株式会社病院のことである。アメリカ型の医療制度を目指すとどうなるかについては、李啓充先生の著書「市場原理が医療を亡ぼす アメリカの失敗」に詳しい。

市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗

市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗


 最後に、李啓充先生は次のように講演をまとめた。

 医療保険制度 「民」と「公」の違い

  • 「民」(米国型)
    • 応益負担
    • 不平等・不公平であるだけでなく、社会全体の医療費負担も高くつく。
  • 「公」(西欧・日本型)
    • 応能負担
    • 平等・公平であるだけでなく、社会全体の医療費負担も安く上がる。


 日本医療「タイタニック」化の危機

  • 「民」の保険は一等・二等・三等の船客を差別する制度
  • 「公」を減らして「民」を増やした保険制度への移行は、日本が誇る「皆保険丸」を氷山にぶつけようとする行為と変わらない。

 大村昭人先生については、以前、本ブログでも医療立国論でご紹介した。

医療立国論―崩壊する医療制度に歯止めをかける!

医療立国論―崩壊する医療制度に歯止めをかける!


 今回の講演も、ほぼ「医療立国論」に沿って行われた。結論部分のスライドを引用する。

  • 医療は確実な成長産業、経済活性化の鍵(EU諸国の例)
  • 医療の分野は大きな雇用母体
  • 国民皆保険は国家のインフラ
  • 高齢化社会で医療・介護、健康産業の需要は益々拡大
  • 発想の転換が必要! → 医療費は国の負債ではなく投資である。高齢者や女性が健康で生きがいを持って働ける社会環境の整備(北欧の例)。支える財源捻出は工夫次第で十分可能。
  • 市場原理主義導入と医療費の抑制は制度崩壊を招く(米、英の犯した過ちから学べ!一度崩壊すると建て直しには莫大な費用とエネルギーが必要)
  • 格差なき経済成長は可能だ(北欧の例)!


 医療立国にこそ日本の将来がある!


 国民皆保険制度は、国家のインフラである。この制度を崩し、ビジネスチャンスを狙っている一部の経済人は亡国の徒である。社会保障費を増やすことこそ経済活性化の鍵であるという主張に共感する。


 医療崩壊に関する論客2人のお話を拝聴することができ、有意義な一日だった。お二人の先生に心から感謝を述べたい。