急性期病棟におけるリハビリテーション専門職配置への加算は期待はずれ

 急性期病棟におけるリハビリテーション専門職配置に加算がつくことになったが、その点数は期待はずれの低さにとどまった。該当資料は、中央社会保険医療協議会 総会(第272回) 議事次第内にある、総−1(PDF:2,142KB)の128〜129ページ、別紙1−1(医科診療報酬点数表)(PDF:3,154KB)の入院料等6/71、15/71、17/71ページにある。


関連エントリー

第1 基本的な考え方
 急性期病棟に入院している患者について、ADL の低下が一部にみられることから、急性期病棟におけるリハビリテーション専門職の配置等についての評価を新設する。


第2 具体的な内容
 一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟)または専門病院入院基本料の 7対 1 病棟、10 対1病棟について、理学療法士作業療法士又は言語聴覚士を配置した場合の加算を新設する。また算定にあたって、ADL に関するアウトカム評価を要件とする。


 (新) ADL 維持向上等体制加算 25点(1日につき、14 日を限度)
 ※ 当該加算を算定している患者について、疾患別リハビリテーション等を算定できない。


[施設基準]
1)当該病棟に専従の理学療法士作業療法士又は言語聴覚士を1名以上の常勤配置を行うこと
2)当該保険医療機関において、リハビリテーション医療に関する3年以上の臨床経験及びリハビリテーション医療に係る研修を修了した常勤医師が1名以上勤務していること
3)当該病棟の直近1年間の新規入院患者のうち、65歳以上の患者が8割以上、又は循環器系の疾患、新生物、消化器系、運動器系または呼吸器系の疾患の患者が6割以上であること
4)アウトカム評価として、以下のいずれも満たすこと。

  • ア) 直近 1年間において、当該病棟を退院した患者のうち、入院時よりも退院時に ADL の低下した者の割合が3%未満であること。
  • イ) 当該病棟の入院患者のうち、院内で発生した褥瘡を保有している入院患者の割合が1.5%未満であること。


 単純計算をする。施設基準を満たした50床の病棟で全ての患者が14日以下だとすると、1日あたりのADL 維持向上等体制加算点数は、50×25=1,250点となる。一方、脳血管疾患等リハビリテーション料(I)をとっている場合、廃用症候群の点数は1単位あたり180点となる。療法士1人あたり1日18単位行なうとしたら、早期リハビリテーション加算30点と早期加算45点を合計し、(180+30+45)×18=4,590点となる。ADL 維持向上等体制加算を選択すると、療法士1人あたり1/3以下となる。疾患別リハビリテーション料を算定できない加算設定は経営的にはデメリットでしかない。さらにいうと、「疾患別リハビリテーション等」に何が含まれるのかが明らかになっていないが、摂食機能療法やリハビリテーション総合計画評価料まで含まれるとなると、ダメージはより深刻になる。


 なぜ、このような点数設定をしたか、厚労省の意図は不明である。もしかしたら、今後、入院料のなかにリハビリテーション料包括化しようという構想が密かに進められているのかもしれない。いずれにせよ、お題目とは異なり、ADL 維持向上等体制加算を算定する病院はほとんどなく、急性期病棟へのリハビリテーション専門職配置は促進されないと予想する。

リハビリテーションの外来への円滑な移行の推進

 リハビリテーションの外来への円滑な移行の推進に関する改定がなされた。該当資料は、中央社会保険医療協議会 総会(第272回) 議事次第内にある、総−1(PDF:2,142KB)の130〜133ページ、別紙1−1(医科診療報酬点数表)(PDF:3,154KB)リハビリテーション2/11〜7/11ページにある。また、議論のもとになった資料は、中央社会保険医療協議会 総会(第262回) 議事次第内にある、個別事項(その3:リハビリテーション)について、総−1(PDF:2,479KB)の19〜36ページにある。

第1 基本的な考え方
 リハビリテーションの外来への早期移行を推進する観点から、外来における早期リハビリテーションを評価するとともに、外来でリハビリテーションを提供する医療機関へ紹介した場合の評価を行う。
 また運動器リハビリテーション料Iについて評価を見直す。


第2 具体的な内容
1.地域連携診療計画管理料等の対象疾患である脳卒中及び大腿骨頸部骨折について、脳血管疾患等リハビリテーション料及び運動器リハビリテーションの初期加算、早期リハビリテーション加算を、退院後に外来でリハビリテーションを行った場合でも算定可能とする。


2.リハビリテーション総合計画を外来のリハビリテーションを提供する別の医療機関へ提供した場合の評価を新設する。
 (新)リハビリテーション総合計画提供料 100 点(退院時1回)


[算定要件]
 入院中にリハビリテーション総合計画評価料を算定し、退院時において地域連携診療計画管理料等を算定した患者について、地域連携診療計画に基づき、退院後の治療を担う他医療機関に対して、リハビリテーション総合計画を文書により提供した場合に、発症、手術又は急性増悪から 14 日以内に限り、退院時に1回に算定する。


3.外来の患者についても運動器リハビリテーション料Iを算定可能とする。


 改定の内容は、下図のとおりとなる。


(以下、修正・追記があります)
 早期退院および外来での早期リハビリテーションを評価する改定である。(追記・修正)脳卒中及び大腿骨頸部骨折については、外来でも初期加算、早期リハビリテーション加算を算定できる。また、特に、入院期間の短い上肢骨折、下腿〜足部骨折、膝関節術後患者に対し、外来でリハビリテーションを継続することの多い整形外科にとっては、より点数が高い運動器リハビリテーション料1を算定することが可能となり、プラスとなる(追記・修正終わり)。急性期病院は手術に集中する一方、中小病院と診療所で通院リハビリテーションを継続するというイメージとなる。医療機能の分化と連携を推進する改定といえる。

回復期リハビリテーション病棟入院料1の体制強化加算は大盤振る舞い

 回復期リハビリテーション病棟入院料の改定が行なわれた。該当資料は、中央社会保険医療協議会 総会(第272回) 議事次第内にある、総−1(PDF:2,142KB)の28〜30ページ、別紙1−1(医科診療報酬点数表)(PDF:3,154KB)の入院料等44/71〜45/71ページにある。


関連エントリー

第1 基本的な考え方
 回復期リハビリテーション病棟について、患者の早期の機能回復、早期退院を一層推進する観点から、より充実したリハビリテーションの提供体制を評価する。


第2 具体的な内容
1.回復期リハビリテーション病棟入院料 1 を算定する病棟において、専従医師及び専従社会福祉士を配置した場合の評価を新設する。
 回復期リハビリテーション病棟入院料1
 (新)体制強化加算 200点(1日につき)


[施設基準]
 当該病棟にリハビリテーション医療に関する3年以上の経験及びリハビリテーション医療に係る研修を修了した専従の常勤医師1名以上及び退院調整に関する3年以上の経験を有する専従の常勤社会福祉士1名以上が配置されていること。


2.回復期リハビリテーション病棟入院料1の休日リハビリテーション提供体制加算について、当該要件を回復期リハビリテーション病棟入院料1の算定要件として包括して評価する。
 回復期リハビリテーション病棟入院料1 1,911点 → 1,971点 *1


[施設基準]
 休日を含め、週7日間リハビリテーションを提供できる体制を有していること。
[経過措置]
 平成 26 年3月 31 日に回復期リハビリテーション病棟入院料1の届出を行っている病棟であって、休日リハビリテーション提供体制加算の届出を行っていない医療機関については、平成26年9月30日までの間は上記の基準を満たしているものとする。


3.回復期リハビリテーション病棟入院料 1 における重症度・看護必要度の項目等の見直しを行う。
[施設基準]
 当該病棟へ入院する患者全体に占める看護必要度A項目の得点が1点以上の患者の割合が1割5分以上であること。→ 当該病棟へ入院する患者全体に占める一般病棟用の重症度、医療・看護必要度A項目の得点が1点以上の患者の割合が1割以上であること。
[経過措置]
 平成 26 年3月 31 日に回復期リハビリテーション病棟入院料1の届出を行っている病棟については、平成26年9月30日までの間、上記の基準を満たしているものとする。


4.患者に適したリハビリテーションを実施するため、患者の自宅等を訪問し、退院後の住環境等を評価した上で、リハビリテーション総合実施計画を作成した場合の評価を新設する。
 (新) リハビリテーション総合計画評価料 入院時訪問指導加算 150点(入院中 1回)


[算定要件]
1 入院前7日以内又は入院後7日以内の訪問に限る。
2 回復期リハビリテーション病棟入院料を算定する患者に対して、医師、看護師、理学療法士作業療法士又は言語聴覚士の少なくとも1名以上が、必要に応じて社会福祉士等と協力して、退院後生活する自宅等を訪問し、退院後生活する住環境等の情報収集及び評価を行った上で、リハビリテーション総合実施計画を作成した場合に算定する。


 上記改定案のなかで、1および4が加算要件、2および3が基準変更となる。当然のことながら、後者の方の影響の方が強い。
 休日提供加算の包括化に関しては、中央社会保険医療協議会 総会(第262回) 議事次第内にある、個別事項(その3:リハビリテーション)について、総−1(PDF:2,479KB)の47〜48ページに該当資料がある。「回復期リハビリテーション病棟入院料1であっても、休日リハビリテーション提供体制加算を算定していない病棟が29.1%を占める。」となっており、残りの7割の病棟にとっては特に問題がない。
 一般病棟用の重症度、医療・看護必要度A項目の得点が1点以上という点に関しては、中央社会保険医療協議会 総会(第272回) 議事次第内にある、総−1(PDF:2,142KB)の2〜3ページに資料がある。回復期リハビリテーション病棟入院患者に関する大きな変更としては、血圧測定5回以上、時間尿測定3回以上が削除され、呼吸ケア(人工呼吸器管理、酸素吸入、気道内吸引、口腔内吸引、痰を出すための体位ドレナージ、スクウィージングのいずれかを実施した場合)から喀痰吸引のみの場合が除かれている。創傷処置は、創傷処置・褥瘡処置のいずれかを実施した場合となっている。基準が厳しくなったためか、A項目得点は1割5分以上が1割以上に引き下げられている。
 休日加算をとっていなかった病棟や血圧測定や時間尿測定でA項目を算定していたところが、回復期リハビリテーション病棟入院料1を断念することになる。一方、人員配置を厚くし、重症患者を積極的に受け入れて来た病棟は基準をクリアできると予測する。


 体制強化加算は、200点(1日につき)という、予想を上回る点数となった。現状で専従配置をしている病院は、50床あたりに換算すると、50日×200点×365日=365万点/年の増収となる。合計3病棟あればそれだけで1億円の増収となる。現時点で専従要件が不明であるが、可能性のある病院では体制強化加算取得を目指す動きが強まると予測する。
 入院時訪問指導加算に関しては、入院初期にリハビリテーション目標が明確になる患者に限定される。医療必要度が高く、状態不安定な方はそもそも対象外となる。地域密着型医療機関で、気軽に自宅等に訪問できる場合にのみ算定できる加算である。

*1:医科診療報酬点数表では、1,911点 → 2,025点 となっているが、消費税相当分も含めての点数と推測する