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リハ医の独白 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-11-09 規制緩和政策と企業倫理の低下

規制緩和政策と企業倫理の低下

 昨日に引き続き、東横イン不正改造事件に言及する。


 南山大学社会倫理研究所/懇話会、瀬口昌久氏(名古屋工業大学大学院工学研究科 教授)の講演(2007年6月16日)、ユニバーサルデザインをめぐる法と倫理より、不正の背景と制度上の問題点について言及した部分を紹介する。

 次に企業不正に関する問題点を5つ挙げます。耐震強度偽装の問題、東電のトラブル隠し、石原産業のフェロシルト問題、つい最近起こったジェットコースター事故、これらに共通する構造的な問題点だと思います。1点目は、監督すべき行政機関に検査する専門能力・人材がないということです。2点目に、最終書類審査をパスすれば、その後の長い運用の期間に査察やチェックを行わないことです。現状では実質的にその施設を運営する企業任せになってしまいます。3点目、専門知識と技術を持った独立した第三者機関が定期的に検査しない。4点目、法令違反への罰則が非常に軽い。そうするとどうなるかというと、故意の偽装や不正を見破ることが不可能な安価で無力な社会システムが温存されるという構造になります。その結果として、事故や公衆の被害が発生してしまう、あるいは不正が告発などで発覚する。そうすると、案件処理のために莫大なコストがかかります。

 経営素人の私の考えですが、新興企業のバブル後の「勝ち組」にはある共通した経営戦略があるのではないかと思います。それは技術革新ではなく、規制緩和政策を利用して、従来よりも格段に安いサービス・商品を販売する戦略です。こうした戦略をバブル後の新興企業の「勝ち組」の多くが採ったのではないか。画期的な技術革新を行ったわけではなく、規制緩和によって、あるいは新しい制度(たとえば介護保険制度)に乗っかるかたちで、極めて安い商品やサービスを売りにして、事業を急激に拡大していくやり方です。コスト削減のためには、サービスを特化し、安い労働力を利用します。派遣業をやっていたトップ企業が最近怪しいことが明らかになりつつありますが、女性の労働力や、正社員としての就職が困難な人たちの安い労働力を使う。「低コスト・オペレーション」というのが、東横インの西田社長の言葉です。

 東横インも、コムスンも、NOVAも同じように、大規模、急速に事業を拡大して、多くが低コストを掲げている。そのためにサービスの質が追いついていかない。その企業の従業員の多くも苦しみます。また、こうした企業が利益を拡大することによって、法令を遵守する優良企業が市場を奪われ、そのしわ寄せを食うことにもなるでしょう。きちんと法令や顧客の安全や従業員の待遇を守っている企業や事業者が、だんだん利益を奪われていくことになります。悪貨が良貨を駆逐していくパターンです。それをバブル破綻以降の日本の政策が勧めて助長した責任は、これから問われることになるだろうと思います。


 本講演で初めて知ったことだが、東横インは女性スタッフだけで運営していることがうたい文句となっている。しかし、女性の社会参加にとりたてて熱心な訳ではない。子育て支援体制などない。低賃金で雇用できるから女性を採用しているだけである。

 低コストのためには何でもあり、という風潮が日本企業にひろがっている。「名ばかり管理職」、「偽装請負」、「過労死」など急激に社会問題化した労働問題と、「不正改造」、「耐震強度偽装」、「トラブル隠し」など企業倫理の低下は、根っこの部分で一緒であることを瀬口昌久氏は示している。

 被害が出てから対応すると、最終的に企業が負担しなければいけないコストはかえって膨大になる。コムスンやNOVAは市場からの退場を余儀なくされた。アメリカでは、バブルがはじけ、濡れ手で粟の大儲けをしてきた金融グループの再編成が進んでいる。日本でも、派遣労働法改正など規制緩和政策の見直しが行われている。新自由主義(市場万能主義)の弊害が明らかになり、揺り戻し現象が始まっている。

 企業が社会的存在として存続してくために、昨今、CSR(企業の社会的責任)という概念が強調されてきている。*1ユニバーサルデザインという概念を理解し、障害をもっていようがいまいが使用しやすい製品を開発することは、企業にとっても新たな市場開発につながる。利用者の声に耳を傾け、能動的に事業展開をしていく企業が評価され、生き残っていく。

 日本では、公務員過剰論が根強くある。しかし、食の安全等に関わる部門などは米国などと比べても大幅に不足しており、むしろ拡充が必要と私は判断している。


 瀬口昌久氏の講演は、1. UD(ユニバーサルデザイン)についての理解度、2. ホテル東横インの不正改造問題から学ぶこと、3. 「バリアフリー新法」をめぐる課題の3部構成となっている。今回は、ホテル東横インの不正改造問題から学ぶことより一部を紹介した。他の部分もユニバーサルデザインに興味ある者にとって興味深い内容が多い。一読をお勧めしたい。

2008-11-08 東横イン・ユニバーサルデザイン対応化委員会

東横イン・ユニバーサルデザイン対応化委員会

 東横インに関わる2つの事件を、東横イン自身のホームページ内にあるニュースリリースを用い、振り返る。


# 不法改造事件

お 詫 び

2006.3.1


 この度、ホテル東横インの建物の増改築、駐車場、付帯設備などについて、各地で数多くの違反が指摘されております。法令の精神を尊重しなかったこと、またお体の不自由な皆さまのお気持ちを傷つける結果になりましたことは、誠に申し訳なく、深くお詫び申しあげます。

 申すまでもなく、ホテルは、本来きわめて公共的な建物です。しかし、私どもはビジネスホテルとしての利便性に目を奪われ、すべての人が積極的に参加できる豊かな社会を築いてゆきたい、という社会の強い意志により制定されたハートビル法、ならびに関係法令の精神を顧みる姿勢に著しく欠けておりました。私どもは、このたびのご叱責を深く心に刻むとともに、いまいちど私どもに課せられた使命につき、思いをめぐらせているところでございます。

 ただいまは、行政当局の綿密なご指導を受けながら是正措置をとり、すべて適法な状態に戻すべく最大限の努力を傾けております。

 今後は高齢者の方や、障害をお持ちの皆さまに円滑にご利用いただける、そして私どものホテルにお越しくださるすべてのお客様に対し、あたたかく、やさしいビジネスホテル作りのために、たゆまぬ努力を重ねてまいります。

具体的には


1. 高齢者および身体障害者の自立と社会的活動への参加の促進 目的とした「ハートビル法遵守委員会」を社内に設置します。

2. お体の不自由な方の雇用、社会進出への支援を積極的に促進します。

3. 社外の有識者を中心とした「施設法令監視委員会」を新設します。


 何卒よろしくご指導のほどをお願い申しあげます。

 誠に申し訳ございませんでした。心よりお詫び申しあげます。


株式会社 東横イン

代表取締役 西田憲正

 新しい経営組織・社内体制への変更(2006.1.27)


 去る平成18年1月27日に「建築基準法」「ハートビル法」違反のご指摘を受けまして以来、行政当局の綿密なご指導をいただきながら、東横イングループは全社一丸となりその是正・改善に努めてまいりました。

 6月末日の是正完了予定に先立ち、2度と過ちを繰り返さない体制とするため経営組織、社内体制を以下のように刷新いたしました。


【委員会設置会社への移行】

 従来の「監査役設置会社」から「委員会設置会社」に移行し、取締役会に社外取締役を中心とした「指名委員会」、「報酬委員会」、「監査委員会」を設置いたしました。

取締役会の半数を占める社外取締役の厳しい目で経営業務を監視していただき、コーポレートガバナンスの強化をしてまいります。(新役員等は会社案内の項参照ください)


【内部監査室の設置】

 法令遵守を徹底させるために、「内部監査室」を設置いたしました。「監査委員会」と連携し、社内の隅々にまで目を配り、コンプライアンス体制の強化徹底をはかります。


【ユニバーサルデザイン対応化委員会】

 先にお知らせいたしましたように3月27日にスタートいたしました「施設法令監視委員会」、「ハートビル法遵守委員会」を統合発展させ「ユニバーサルデザイン対応化委員会」といたしました。この委員会で施設・ハートビル法の遵法状況をチェックしてまいります。(委員会活動は別項にて紹介)

 ユニバーサルデザイン対応化委員会より

改善活動への取組みに関する「最終答申書」を受領(2007.11.07)


 2007年4月3日に開催された弊社取締役会は、ユニバーサルデザイン対応化委員会に対して、「改善活動についてのこれまでの活動の取りまとめと、それに関する評価・提言など」について諮問しました。


 2007年11月7日開催の取締役会において、本答申書の内容などについての報告を行ないました。


>>ユニバーサルデザイン対応化委員会「最終答申書」(PDFファイル)


 弊社は、本答申を踏まえて、コンプライアンス確立への取り組みをさらに強化・推進し、またユニバーサルデザイン対応化委員会から活動を継承したユニバーサルデザイン対応委員会及び法令遵守委員会は、引き続き、この改善活動、また社会の皆様に対する信頼回復への取り組みに対して指導・助言を行ないます。


# 硫化水素発生事故

東横イン松江駅前 異臭発生事故について

2008.6.26


5月28日15時頃、東横イン松江駅前の地下から硫化水素ガスが発生する事故があり、ご近隣の皆様、ご宿泊の皆様には大変なご迷惑とご心配をおかけいたしましたこと、衷心よりお詫び申し上げます。


この件につきまして、現在までの状況を以下の通りご報告申し上げます。


1.経緯について


2.発生原因について

地下配管スペース内に不適切に残置された建築廃棄物と2006年7月の豪雨による水が化学反応をおこし硫化水素を発生させた可能性が高いと推測されております。(6月2日時点)


3.対策について

弊社は、東横システム電建が第三者機関を使って調査する115件全て(同社工事施工分)の調査結果をもとに、必要に応じ 早急な措置対応を要請しております。

並行して、弊社としまして全ての東横イン178ホテル(松江駅前を除く全ての東横イン)の地下配管スペースの一斉点検を自主的に実施させていただきました。また、自主点検に加え、地下スペースのある店舗については専門家(建築物検査の有資格者)による再確認を6月11日より現在すすめております。 再確認の結果につきましてはホームページでご報告させていただきます。


建物の管理者である弊社といたしまして、このような事態が生じましたことを重く受け止めており、お客様・ご近隣の皆様に大変ご迷惑をおかけしましたことを心からお詫び申し上げますとともに、今後同様の事態が発生しないよう対処に努めてまいる所存でございます。


東横イン松江駅前につきましては、すべての作業が終了し、お客様への安全が確認できるまで営業を自粛させていただきます。お客様には大変ご迷惑をおかけいたしますが何卒ご理解をお願い申し上げます。尚、すでにご予約をいただいておりますお客様には、個別にご連絡させていただきます。


ご近隣の皆様には撤去が完了するまで引き続きご迷惑をおかけいたしますが、一日も早くご安心いただけますよう、作業をすみやかに完了させるべく努力してまいりますので、重ねてご理解のほどお願い申し上げ申します。


代表執行役社長 重田訓矩

東横イン松江駅前硫化水素発生事故に関する件について(2008.9.18)


東横イン松江駅前で起きました硫化水素事故の関係で、本日9月18日、当時の工事責任者等がその原因となった廃棄物を放置、及び放置を許可したとして産業廃棄物処理法違反の容疑で、島根県松江警察署に逮捕されました。弊社といたしましては、グループ会社社員ではございますが大変に重い事態と真摯に受け止めております。現在は、捜査進行中でございますので詳細につきましてのコメント等は差し控えさせていただきますが、警察の捜査につきましては全面的にご協力させていただく所存でございます。大変申し訳ございません。

代表執行役社長 重田訓矩

東横イン松江駅前硫化水素発生事故に関する件について(2008.10.16)


東横イン松江駅前で起きました硫化水素事故の関係で、平成20年10月9日、当時の工事責任者であった、グループ会社である東横システム電建の役員等が松江地方裁判所に公判請求されるとともに、ホテル新築工事に従事した工事担当者10名に対して罰金の処分が科せられました。


当社は、かかる事態を厳粛に受け止め、この事故により多大のご迷惑とご心配をおかけいたしました島根県民の皆様並びに松江市民の皆様に深くお詫びを申し上げるとともに、関係者の皆様にも深くお詫び申し上げます。

代表執行役社長 重田訓矩

弊社元会長逮捕について(2008.10.29)


 株式会社東横システム電建が平成16年10月から12月にかけて施工しました東横イン松江駅前の内装工事において、建築廃材が当店舗地下ピット内に投棄された廃棄物処理法違反の容疑で、当時の株式会社東横システム電建 代表取締役会長 西田憲正が、逮捕されましたことは、大変遺憾であり、関係各位に多大なご迷惑をおかけいたしましたこと深くお詫び申し上げます。


 現在は、捜査進行中でございますので詳細についてのコメントは差し控えさせていただきますが、捜査には全面的にご協力させていただく所存でございます。

 また、弊社では、本年6月から9月までの間、全国の東横インにつき第三者機関による調査をいたしましたが、本件と同様の不法投棄の事実はございませんでした。


 弊社株式会社東横インは、平成18年1月以前に開業したホテルにおいて建築関係の法令違反があったため、再発防止・法令遵守の徹底をはかるべく、同年5月、委員会設置会社へ移行しました。西田憲正も、代表権並びに業務執行権のない取締役会長に就任しておりましたが、東横イン松江駅前施工当時の株式会社システム電建の代表取締役であったことから、本年9月、弊社及び東横イングループのすべての役職を辞任いたしております。


 今後につきましては、ホテル事業運営の関係法令の遵守とグループ内のガバナンス体制の強化にも努めてまいる所存でございます。


株式会社東横イン 代表執行役社長 重田訓矩


 東横イン不法改造事件が起こった時、西田憲正社長(当時)は「障害者用客室つくっても、年に1人か2人しか泊まりに来なくて、結局、倉庫みたいになっているとか、ロッカー室になっているのが現実」、「(違法改造は)制限速度60kmの所を65kmで走ったようなもの」などの暴言を吐いた。一連の発言の根底にある差別意識に対し嫌悪感しか感じられなかった。この事件以降、何があったとしても東横インだけには泊まらないと心に誓った。

 今回、東横イン松江駅前硫化水素発生事故が報道された時、「また、東横インか」と正直うんざりした気分になった。ホームページを覗いてみると、「ニュースリリース」のほとんどが謝罪で埋まっている。ひとつ皮肉でも言おうかと思い、本エントリーを書き始めた。

 ところが、当時マスコミで繰り返し喧伝された東横インの傲慢さは「ニュースリリース」には認められない。それどころか、ユニバーサルデザイン対応化委員会「最終答申書」のあまりのまともさに驚かされた。年齢、性別による差異、障害の有無に関わらず利用することができる施設を作るというユニバーサルデザインの思想を具現化することが、企業の社会的責任であることを自覚している。社長のワンマン体制から、社外取締役の厳しい目で経営業務を監視される「委員会設置会社」に移行したことも特筆すべき点である。今回の硫化水素異臭事件も、元社長の負の遺産である。現経営陣には落ち度はない。

 高齢者や障害者には低所得層の方が多い。低価格でも配慮が行き届いた宿泊ができるホテルが増えることは望ましい。「東横インは、目先の経営優先体質から顧客第一主義に生まれ変わった」と信じてみたい気持ちになっている。