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リアリズムと防衛を学ぶ このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

「現在、国際的な緊張というものは、人びとが想像するほど異常なものではない。
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2010-03-13

「韓国軍が自衛隊に勝った!」というニュースが別にどうでもいいワケ

 陸上自衛隊韓国陸軍に敗北したというので、いくらかニュースになっているようです。といっても日韓のあいだで紛争が起こったのではありません。

日本の陸上自衛隊初級将校たちが陸軍のサバイバル訓練場で韓国軍将兵たちと実戦的なゲームをした。……自衛隊初級将校12人の相手は、KCTC所属の「サソリ大隊」兵士12人だった。サソリ大隊はサバイバルゲーム専門部隊だ。戦闘は実際の戦場とそっくりに作られているKCTCサバイバル訓練場で約30分間行われた。結果は自衛隊将校11人がレーザービームに当たって戦死処理された。一方、サソリ大隊兵士らは全員無事だった。

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 この件について、他によほどニュースが無いのか、一部メディアが妙に大きく報じました。なので、この件をもってして陸上自衛隊そのものの実力が韓国陸軍に大きく劣るかのように勘違いなさった方々が日韓両国にいらっしゃるようです。

 しかし報道というのは現象の一部だけを切り取って為されるものですす。一部だけ切り取られたところを見ると、本来の現象とはまるで印象や意味が異なったりします。切り取られた一部だけの印象でニュースを解釈すべきではありません。本来の文脈を捜査し、あるいは推測した上で判断すると良いと思います。


異質なサンプルでは比較ができない

 例えばこの件です。「陸自の12名が韓国陸軍の12名と対戦した。陸自は1名を除いて全員戦死判定。一方で韓国側は全員生存」とだけ聞いたとします。すると、なにやら衝撃的なニュースのような、いかにも韓国が強く自衛隊が弱いような気がします。しかし欠けているところを補うと、意味が変わってまいります。

 例えば陸自と韓国軍、人数はどちらも12名で同数だけれども、中身は同質ではない、という点です。もし両陣営ともが最精鋭の歩兵普通科)部隊同士で対抗戦をやったのならば、比較として意味があります。しかし実際には、韓国側は訓練所に所属している部隊の兵士、陸自の12名は全員が初級幹部の寄せ集めなので部隊ですらありません。質が違うメンバーなので、比較対象にできません。

 自衛隊の「幹部」というのは、会社でいうならば管理職です。小部隊を指揮する隊長イメージしてください。それぞれ部隊を率いている管理職を集めた12名です。個人的な戦闘能力が強く求められる階級でもなければ、日ごろからチームとして戦闘訓練をしている”部隊”ではありません。一方で韓国側は常日頃からチームとして訓練している同じ隊の兵士です。

 他にも、韓国側はこの訓練場を日ごろから使ってるのだから地形を熟知しているとか、そもそも自衛隊の幹部は普通科(歩兵)とは限らないとか、使用した装備は韓国のものなので使い慣れてないとか、いろいろ要因があります。

 いずれにせよ、この対戦で自衛隊側がもし勝てたとしたら、それは明らかに異常でしょう。もしそうであれば、韓国軍には何か致命的な欠陥があることになってしまいます。

なお自衛隊と韓国軍が実戦を行う場合、両方とも"部隊"で戦います。指揮官は指揮官として部下を率いる立場となります。個人的な戦闘能力を発揮するのは、曹や士、いわゆる下士官と兵隊の役割です。なので実戦における日韓の実力を推定するには、部隊同士をぶつける対抗戦でなければなりません。


監督オールスターズの戦い

 多少ズレた例えなのですが、プロ野球の日韓戦でイメージしてみましょう。日本プロ野球の監督たちが、韓国野球の視察・親善のために訪韓します。そこで韓国のハイテク練習場を見学したのです。それで「どうです一つ体験してみませんか」という話になりました。

 そこで日本野球界の訪問団は、これは一興と思って、臨時にチームを作ります。セカンドはジャイアンツ原監督、サードはタイガースの真弓監督…といった具合。全プレーヤーが監督によって構成された、監督オールスターズです(これはこれでちょっと見てみたいですね)。対する韓国側は球団ふつうのメンバーです。

 これで日韓戦をやって、韓国チームが圧勝、日本側の監督オールスターズが負けたとして、これは何か変でしょうか。その勝敗をもって、韓国野球は日本野球より圧倒的に優れているのだ、と主張できる人は誰かいるでしょうか? いいえ、両国野球の実力を試験するなら、例えばある年の優勝チーム同士をぶつける、ということをしないと比較の意味をなしません。それに敗北した監督オールスターズは、だからといって野球の能力が劣っているとはいえません。監督の仕事は指揮であって、自らボールを追っかけるところにはないからです。

 もっとも初級幹部の場合、必ずしも野球監督ほど年がいっているわけではありません。また「指揮」が本業ではあるけれど、個人的な戦闘能力もある程度は無いと困ります。

 ですがそれにしても、これで韓国側が勝ったからといって何か軍事的に意味があるニュースではありません。これは、ただの”ほのぼのニュース”です。


軍隊に「強い、弱い」なんて無い

 ですからこのニュース自体は別にどうでもよい話なのですが、この件で話題にのぼった軍隊の強さというテーマについては、色々と考察の余地があります。自衛隊や軍隊には、一般に思われているような意味では、「強い、弱い」というものはありません。例えば「自衛隊と韓国軍はどちらが強いの?」という質問には答えが無いのです。もう少し正確に言うと「阪神タイガース読売ジャイアンツのどちらが強いか?」というのと同じように、自衛隊と韓国軍、あるいは北朝鮮軍やアメリカ軍でもいいですが、普遍的な強弱を論じることは無意味です。

 なぜならば、各国の軍隊または自衛隊は、それぞれ、仕事が違うからです。自衛隊は日本を防衛するのが仕事であり、韓国軍は韓国を守るのが仕事です。この2つの仕事のあいだには、非常に大きな差があります。そのために保有している能力も、質に大差があります。

 よって「自衛隊と韓国軍はどっちが強いの?」という質問は、「阪神タイガース(野球)と鹿島アントラーズサッカー)はどちらが強いの?」と聞くようなものです。プレイしている競技の内容が違うのだから、強いも弱いも、比較できません。野球をやるなら阪神が勝つだろうし、サッカーをやるなら鹿島が勝つんじゃないですか、としか答えられません。

 あるいは、バッティング能力ならタイガースが優れ、脚力ならアントラーズが優れている、という風に個々の能力を比較することならできます。が、それにしてもさしたる意味はありません。


アメリカに勝利した北ベトナム軍は世界最強?

 いま少し具体例を挙げるならば、ベトナム戦争です。この戦いにおいて、アメリカ軍は北ベトナム軍に敗北しました。アメリカ軍はいってみれば”世界最強”の軍隊ですが、それでも北ベトナムに勝てませんでした。

 では勝利した北ベトナム軍は、アメリカ軍より強いのだから世界の覇権を握れるでしょうか? もちろんそんなことは不可能です。

 同様に、自衛隊にも演習その他で米軍の上をいった話はいくらでもあります。しかしだからといって「自衛隊最強」というわけではないのです。

 このように、軍隊の「どっちが強い」というのは難しい問題です。


すべては状況次第

 ここで自衛隊と韓国軍の比較に話を戻しましょう。これについても、強弱を論じたいなら状況を限定する必要があります。

 例えば対馬を取り合って韓国側が対馬上陸を試みたら場合にはどうか、あるいは自衛隊側が何を間違ったか釜山を占領しようとするならば、という風に話を限ります。その上で陸海空の戦力などを総合的にみれば「たぶんこっちが有利だろう」ということは言えます。対馬を取り合うなら韓国にはまず勝ち目がないでしょうが、かといって自衛隊が釜山を占領し続けることも不可能、という風に。

 ですが状況を考えず、どっちが強い、弱い、と論じることは、与太話以上の意味をもちません。ましてや一部の人員のみを比較してそれを考えるなどとは。野球という共通のゲームをプレーする阪神と巨人の強弱を論じるのとは違います。

 各国の軍隊はそれぞれ任務が異なります。普遍的に強い軍隊や弱い軍隊は無いのです。限定した個々の状況や能力において、勝つ軍隊と負ける軍隊が有るだけです。


 軍隊の強弱については他にもいろいろな事情や誤解があり、さらに詳しく語るべき問題です。また回を改めて書きたいと思います。

 これについて詳しくお知りになりたい方は、故江畑謙介氏が「強い軍隊、弱い軍隊」というそのものズバリな本があります。これが実にいい本なので、お勧めしておきます。


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sorarisu0088sorarisu0088 2010/03/13 18:50 >>「自衛隊と韓国軍はどっちが強いの?」という質問は、「阪神タイガース(野球)と鹿島アントラーズ(サッカー)はどちらが強いの?」と聞くようなもの

↑大いに首肯した部分。すばらしい例えだと思います。件の中央日報の記事のはてブには、「自衛隊よわっm9(^Д^)プギャー」みたいな無知蒙昧な愚民がいて苦笑したものですが、溜飲がさがりました。

如月如月 2010/03/13 19:18 いつもお世話になっております。
こちらへは初めてコメントさせていただきます。

タイトルで内容が解ってしまいました。
このような記事で『自衛隊不要論』を声高に叫ぶ輩がいっぱいいるのでしょうね(苦笑)。
メディアに踊らされてはいけませんね、私も精進いたします!
今後とも宜しくお願い致します。

EMEM 2010/03/13 19:47 自分の周囲にもいました。そういう人。
さらには「自衛隊は階級の高い尉官ばかりだったのだから、日本の最精鋭だったのだろう」
というような解釈をする人まで・・・。
ゲームや何かと勘違いなさってるようでしたが、拙いながらもzyesuta氏と似たような例えをして納得していただきました。

JP233JP233 2010/03/13 22:13 今回も見事な解説ですね。
話の組み立てがすっきりしているので、読んでいて大変分かりやすく、面白かったです。

huhihinohihuhihinohi 2010/03/14 03:03 >階級の高い尉官だから強い
間違いなくワンピースの影響

Shu UETAShu UETA 2010/03/14 03:38  というか、幹部か曹士かという以前に今回のあれは訓練施設見学に伴なう体験参加なのでね。 ^^
 食品メーカー同士の業種会の会合で、今回の会合ホスト会社の工場視察の一環にピザ生産ラインの作業の一部を体験してください、といったような。
 加えて言うなら、当該訓練施設の韓国兵士は専門の「対抗部隊」役なわけだしね。空自で言えばアグレッサー、教導隊だね。 ^^

laclefdorlaclefdor 2010/03/14 04:32 たとえ話が大変上手ですね。実に説得力のある文章だと思いました。

秋幸華(チゥ・シンファ)秋幸華(チゥ・シンファ) 2010/03/14 04:48 拝見いたしました。

1.異質なサンプルでは比較できない
2.監督オールスターズVS普通のチーム
3.阪神タイガースVS鹿島アントラーズ
4.アメリカ軍VS北ベトナム軍
5.全ては状況次第(対馬や釜山)

いずれも例えの設定が秀逸ですし、話の構成・組み立てもすっきりしていて非常に分かりやすいものでありました。
こういう一見「センセーショナルな記事」について、マスコミ(マスゴミ)どもの思惑に引っかかって「踊らされる」ことなく、冷静かつ冷徹に受け止めたい・判断したいものであります。(まさに「リアリズムと防衛」の真骨頂)
江畑謙介氏………。やはり昨年の氏の早逝については惜しまれてなりません。惜しい方を亡くしたものであります。

rizhen939jprizhen939jp 2010/03/14 09:19 少しネットで今回のことを検索してみると、今回のアグレッサーはかなりの地形的有利を持っていて、特司軍であっても勝率が悪いとか。
(真偽の程は定かでないですが…)

今回のニュースで最も気になったのは、とにかくネット上では過激な書き込みが目立ったことでしょうか。防衛費増額せよだの、自衛隊弱兵だの。
100年前の論調とそう大差ない気がするので、なんだか不安になります…。

kanekokaneko 2010/03/14 10:11  はじめて投稿させていただきます。記事を読み、大いに首肯しました。確かに軍事分野での各国軍・兵器の単純比較には、危機感と言えば大げさですが、嫌悪感をもってしまいます。
 軍事分野に限らず、昨今の日本と諸外国の諸制度や高校の大学合格実績などの単純比較する風潮には、どうしても不安感と嫌悪感がこみ上げてきます。比較することはいいのですが、もっと深い考察に基づく比較でなければ意味がないと思ってしまいます。

   2010/03/14 13:13 ほうほう、日本側が全滅とな!こりゃいけませんなー(棒)
こんな事では国を守れないので早急に防衛予算を大幅に増さねばなりませんwww

dadydady 2010/03/14 13:23 戦争はポケモンじゃない。
全く同条件でジャンケン出し合いながらするようなものでもない限り、強い弱いの議論は無駄ですね。

shamrshamr 2010/03/14 13:30 韓国の新聞社のコメント欄を翻訳してみると、一般の韓国人は「こんなの自慢になるか。恥ずかしい記事」という反応が多いみたいです。兵役経験した人が多い国の方が冷静。今回、日本側に見られた過剰な反応も、ある意味平和ボケなのかしらと思ったりしました。

   2010/03/14 17:23 いつも興味深く拝見させていただいております。

他社の営業ベテランチームの現場を見学に来た、取引先の新任管理職たちが「ちょっとやってみませんか?」とか言われて見知らぬ土地と馴染みのない商材で、ぶっつけ本番の飛び込み営業をやらされたというところでしょうか。
韓国側の思惑がどうあれ、幹部達としては現場の最前線(専門部隊の訓練)を
実体験できたのですから、これを将来に生かしていただければいいと思います。

藤宮 直樹藤宮 直樹 2010/03/15 15:26 そもそもこの新聞記事から韓国軍と陸自の強弱を論じている時点で見方が浅いかと。
zyesuta氏の監督オールスターズの例えでも同様のことが言えますが、これはどう見ても負けたとされる側の方が多くの情報を得ていますよね。

12名もの自衛隊幹部が、その身で韓国軍のアグレッサーの強さと戦術を知ったと言うことは大変意義のあることだと思います。韓国が敵性国家と国境を接する陸軍国だと言うことも併せて考えると中央日報の「サバイバル学んだ〜」と言うタイトルは秀逸だとも思えます。

この敗北から参加した幹部がどのようなことを学び取ったのか、興味深いですね。

61式61式 2010/03/15 21:09 今回のたとえ話も判り易く大変素晴らしい記事だと思いました。
自衛隊幹部の韓国製の電子機器(GPS等)の評価を聞いてみたいと個人的にはこの記事を読んだ時に思ったけれど半ば与太記事の為か追加情報が無いのが残念。

AnnsAnns 2010/03/15 22:14
>監督オールスターズの戦い
この例えはとても解りやすいですね、使用した装備品や模擬戦のルールがどうなっていたのかも気になります。
私の周囲にも、この件について正しく理解している人は、余り居ませんでした。改めて説明する機会があれば、この記事を元にさせて頂きます。

AozoraAozora 2010/03/16 15:26 自衛隊は軍隊じゃないから、
会社員が軍人に勝ってる訳がない。

ぬるねこぬるねこ 2010/03/16 22:05 >>Aozora
記事をまともに読んでいない人は書き込まないでくださいね
コメント欄が汚れるから

RuruRuru 2010/03/17 12:37 >dady氏
ポケモンだってただ単に「強い」「弱い」で語りきれるもんじゃありませんぜ。
シングル戦用とダブル戦用では強さに大きな差が出る技やポケモンも多いですし。
バトルパレスやバトルピラミッドも考慮に入れれば、単純には語れません。

「どのルール、どの地形で戦うか」をちゃんと決めない限りは強さ議論に意味はないです。

nitpnitp 2010/03/17 18:13 逆に12人全員仕留められなかったことで
当該部隊は叱責されてるのかもしれませんね・・・

aa 2010/03/18 18:54 日本よわ!!

通りすがり通りすがり 2010/03/20 22:09 いつも楽しく拝見させていただいております。
個別の作戦で勝利したとしても、最終的には政治力が戦争の勝敗を決定するという事実。
徹底的に戦力として叩いたとしても、政治的に勝利しないと勝ちではないという事実。
個別の作戦における勝敗ではないですね。

AA 2010/06/28 21:41 どうやって一人生き残ったのかが不思議ですな。

記事での例えが秀逸なので、コメ欄汚しになってしまいますが、
レベル的には、大学サッカー部が甲子園優勝校に野球で勝負した感じ、でしょうか。
「誰が投手やる?」レベルの相談から始まって0-9で負けちゃった、みたいな。

大学サッカー部よわ!!
という低脳のはしゃいでる裏で、「コールド勝ちが普通だろ?」と叱責される甲子園優勝ナイン。。。

七氏七氏 2010/07/24 04:48 どっちが強いか一概にはいえないけど、国力も含めた総合力でいったらやっぱり米君は世界最強なんですよね・・
日米安保が有効に機能してるうちは有難いことではあるのですけど。

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