海野十三敗戦日記


海野十三敗戦日記 (中公文庫BIBLIO)
【タイトル】  海野十三敗戦日記  はてな年間100冊読書クラブ−No.041
【著者】    海野十三 
【編者】    橋本哲夫
【出版社】   中央公論新社(中公文庫BIBLIO20世紀)
【発行年月日】 2005年7月25日
【版型 頁数】 文庫版 223頁
【版 刷】   初版1刷
【ISBN】    4122045614
【価格】    780円
【コメント】
著者は日本のSF小説の草分けであり、日本SFの父と呼ばれる作家。なお名前の読みは『うんのじゅうざ』と読ませる。このペンネームの他にも『丘丘十郎』という筆名での作品がある。早稲田大学理工学部電工学科卒業後、逓信省電気試験所で研究に従事した後、昭和初期より小説を書き始めたとの事。1988年に三一書房から『海野十三全集』が刊行されている。
当時はサイエンスフィクションという言葉より空想科学小説という呼び方が一般的だったようで、本日記にもこの言葉が用いられている。
戦争時に綴った日記が多数出版されているが、多くは小説家、物書き*1により書かれたものだ。この著者も確かに小説家であるが、科学者でもあった。科学技術的視点を持った書き手が戦争への思いを綴ったものとして、本書は貴重な内容を含んでいる。例えば、原子爆弾の製造、ロボットの活躍など“予言”とも言える記述はまさしく未来の姿を想像し描いたものとして注目される。
先に上げた武井武雄・『戦中・戦後気侭画帳』では飄々とそして淡々とした記述の中に、戦争の恐ろしさ、死への不安などが見え隠れしていたが、本書では著者の性格なのかもっとストレートな思いが言葉として多数登場する。従ってよりリアルで、悲壮な情景が生々しく描かれている。日記なので何れの文も短めで読みやすく、また科学者としての論理的、客観的な記述も見られ歴史資料としての側面も大きな意味を持つものと思われる。
以上のように、昭和史の関係書では“異色”の本であると思うが、一風変わった切り口からの“日本史”として興味深く読んだ。
【目次】
空襲部日記 ・・・ 7
降伏日記 ・・・ 73
愛と悲しみの祖国に 橋本哲男 ・・・ 147
編者あとがき ・・・ 205
解説 永山靖生 ・・・ 207
付録 秘密の書斎 ・・・ 221