グレート・ギャツビー / スコット・フィッツジェラルド

ギャツビーという成金野郎のくせに異常なほど純朴な男の話です。こいつがいかにグレートな野郎か期待していたのですが、さしてグレートではないですね。話自体もしょうもない痴情のもつれみたいなものですし。とはいえね。そんなグレートではない、どちらかといえばささやかな話なのですが、それにかけるギャツビーの真摯な情熱だけはグレートなのですよ、オールドスポート。こいつ馬鹿なんじゃねえかっていう皮肉まじりのグレートですがね。(余談だがギャツビーの口癖って当時の人には花輪君のベイビー並みのウザさだったのではないだろうか。)
文章はなかなか凝ってます。まるで適当な表現を一部でも許してしまうと作品全体が汚れてしまうとばかりに、不純物を取り除いた文章になっております。村上春樹の読者にうってつけですね。ただ僕は、こういった人工的な蒸留水じみた小説は好みじゃないです。同じように女の子に振り回される男の話でも町田康「告白」のような、どろどろの話が好きですね。