イタリア映画祭でラウラ・ルケッティ『美しい夏』(2023)を見てきた。 原作はチェーザレ・パヴェーゼの同名小説。刊行されたのは1949年だが、第二次大戦中の40年頃に書かれた。当初の題名は『カーテン』だったという。 パヴェーゼの映画化というとストローブ=ユイレの作品が思い浮かぶ。一方ルケッティの『美しい夏』は原作との向き合い方が違う。原作にインスピレーションを得た二次創作といった性格の作品だ。原作にあった群像劇としての側面は後退し、ジーニアとアメーリアの二人の関係により焦点が当られている。 とはいえ、低予算ながらトリノの美しい街並みを生かすことで、1930年代のイタリアを再現することに成功して…