アラカンこと嵐寛寿郎は、「鞍馬天狗」「むっつり右門」の2大シリーズの主役を務め、脇役に回った晩年は鬼虎を演じて評判となった大スターだ。「50年も役者やってきて、胸を張っていえることなど、かけらもおまへんけどな。お客を楽しませてきた、これだけはまちがいのないことダ」と庶民に支持されてきたことを喜ぶ(『鞍馬天狗のおじさんは 聞書アラカン一代』竹中労著。以下の引用も同書から)。 「月給千円くれよった、たちまち芸者遊びです、ハメがはずれた」という二十代の頃は、小唄を習いに「三味線弾かせて、さしむかいの稽古、個人教授というやっちゃ。へえ毎晩ダ。撮影終わったらまっすぐ祇園・先斗町・宮川筋や、そら熱心なもの…