古代ギリシアで考えられた「想起」。
人の魂は永遠不滅で、あの世からこの世に来た際、我々は記憶喪失になっているが、それらは思い出せば我々は殆ど「全知全能」なのだとする考え。
プラトンの著作『メノン』などに出てくる。
また、殆ど狂的なまでに傑出していた大宗教学者ミルチャ・エリアーデが、最晩年に取りつかれていたのがこの「アナムネーシス」であり、宗教人類学の総合成果・総決算として遺作となった『19本の薔薇』では登場人物たちがダンスしながらあらゆる神秘を想い出して行く。
「小説」の概念を突き崩す、あまりにも、あまりにも鮮やかな遺作であった。ミヒャエル・エンデが子供たちに謎を魅惑したとすれば、エリアーデは大人をさえ夢想漬けにしてみせた。