出口の見えないガザの状況から、またしてもサイードが盛んに呼び戻されている。例えば、篠田英朗は「オリエンタリズム」をキーワードとして、現状を次のように分析する。 欧米諸国の指導者たちは、イラクやアフガニスタンでの失敗から、「オリエンタリズムの対テロ戦争」に懐疑的になったはずだった。ところがウクライナ情勢をめぐり、ロシアという「東方」を侮蔑し、邪悪で弱いものとみなしたい衝動を押し殺せなくなった。そして23年10月7日のハマスのテロ攻撃を見て、イスラエルの占領統治の歴史を忘れ、邪悪で弱い中東のテロリストを駆逐する正しく強い白人、という構図を振り回す魔力に引き寄せられ、感情的なイスラエル支持を打ち出し…