クルト・シュヴィッタース(1887−1984年) 1919年、釘・紙・布などを寄せ集めた「メルツ絵画」(「メルツ」は「コメルツ Kommerz 商業」からの切り取り)を制作。1921年、ハウスマンらと接触し、翌年ワイマールのダダ会議に参加、ダダの終結後は構成主義に進む。1924年、ハノーヴァーの自宅にメルツ芸術を集大成して建設した「メルツバウ」は、構成詩『原(ウル)ソナタ』とともに彼の代表作となる。1933年ドイツを去り、1940年イギリスに移住。
1.WLADIMIR SCHALL『ウルソネート (Urusonēto)』 erratum.bandcamp.com 完全にノンミュージック。こんなものが音楽作品として流れて良いのかと言う印象。X(Twitter)で度々バズるAIに朗読させてみた系をそのまま作品にした感じで、メロディも抑揚もない。虚無の気分の時に流す音楽がどれもしっくりこない時に良い。詩が変でAI朗読の無機質感と相まって笑いそうになる。 ボカロ、合成音声音楽好き必聴の異常音源。1922年から1932年にかけて、ダダイストのクルト・シュヴィッタースによって作曲された音声詩をGoogle翻訳の日本語音声に朗読させた…
ABSTRACTION展の図録で、企画の際に参照した先行研究として挙がっていて、日本語でまとまって読める抽象絵画の歴史についてのほぼ最新の文献っぽかったので、読んでみることにした。 テーマ別に章分けされており、抽象絵画は第1章と第3章 第2章にダダやシュールレアリスム、第4章にネオダダやポップアート、第5章が身体表象、第6章が政治と芸術、第7章はメディアアートになっている。 第1章から第7章までおおむね時系列順に進むが、テーマ別の章立てなので、時系列的には行きつ戻りつすることになる。しかし、その構成がわりと読みやすい。重複して登場する作家・作品もあるが、章によって着目点が違うので、復習しつつ多…
第2部 衰頽から再生へ——『ハウルの動く城』『崖の上のポニョ』論 第3章 衰頽に宿る可能性——『ハウルの動く城』① 第1部で確認したように、『もののけ姫』と『千と千尋』は〈自然〉の死というパラダイムの上に成立しており、ある種『ナウシカ』や『トトロ』からの退却戦であったといえる。『ハウルの動く城』(以下、『ハウル』)もまた、こうした後退のなか制作された作品ではあるが、同時に前二作とは異なる要素も含まれている。その新しい要素とは、すでに生命力を失い、死に至る過程にあるものごとが、再び息を吹き返し、活性化していくプロセスである。本章では、その過程を「老い」と「ゴミ」に関して確認していく。 3-1 対…
小泉淳一「中原実に於けるシュルレアリスムへの軌跡」(『茨城県近代美術館研究紀要』(1)、1991年)。 はじめに 1 フランスかドイツか、中原實の滞欧体験 2 中原實のダダ、村山知義のダダ 3 シュルレアリスムへの接近 4 詩人北園克衛との邂逅 5 テオリサカナ あとがきに換えて―残された課題 〇画家・中原實(1893~1990)は大正期新興美術の代表作家の一人と評価されているが、昭和期のシュルレアリスム時代の活動を位置づけていく。 〇中原の大正期新興美術の活動を跡付けていくにあたり、村山知義と比較していく。村山の主張する「意識的構成主義」が実はクルト・シュヴィッタースのメルツ絵画が下敷きにな…