声の地層 災禍と痛みを語ること/瀬尾夏美 生きのびるブックス 「そういえば今日は9・11ですね。当日、なにしていました?」9月11日にそう聞かれ、23年前をふと思い出した。高校時代、毎朝早く起きて(剣道部だった)素振りをすることを自分に課していた。早く起きて、前の晩に録画していた「タモリのジャングルTV」を素振りの前に観ようとしたら、番組のほぼ全てが臨時ニュースで消えていた。飛行機がビルに突っ込む映像に、声を失った。他国のことだし、テレビの中の映像なので、まるで自分が生きている地球での現実の出来事のように思えず、切迫した恐怖感すら感じなかった。高校生にとって、テレビは、現実と「画面の中の世界」…