走れエウレカ(作者 大丁) シチリア島南東部の都市に、奇習が蔓延し始めた。「エウレカ!」「エウレカ! エウレカ!!」 住民たちが、奇声をあげながら街を走っている。入浴中の姿で。 つまりは体中に泡だけまとって、往来を行き来しているのだ。男女の区別はなく、両手を高くさしあげて、表情は恍惚。「エ、エウレ……いやあん!」 しかし、この異様な景色のなかにあって、『普通』の反応をみせる人間もいる。家屋から飛び出し、数歩すすんだところで、うずくまってしまった。 裸身に、両手を巻きつけるようにして縮こまっている。 通りかかった全裸の男性が、正気に戻った声でささやきかけた。「お嬢さん、いけない。堕落のフリだけで…