アウグスト・フォン・プラーテン August Graf von Platen-Hallermunde (1796-1835) ドイツの擬古典主義の詩人、劇作家。バイエルン出身だが晩年をイタリアに定住した。ソネット、オードなど優れた定型詩を書く。またペルシアの詩形ガザル(ガゼール)を移入し、美しい詩を書いた。
詩集『ヴェネチアのソネット』
「トリスタン」
美(うる)はしきもの見し人は
はや死の手にぞわたされつ、
世のいそしみにかなわねば。
されど死を見てふるうべし
美はしきものを見し人は。
愛の痛みは果てもなし
この世のおもひをかなへんと
望むはひとり痴者ぞかし、
美の矢にあたりしその人に
愛の痛みは果てもなし。
げに泉のごとも涸れはてん、
ひと息ごとに毒を吸ひ
ひと花ごとに死を嗅がむ、
美はしきもの見し人は
げに泉のごとも涸れはてん。
翻訳:生田春月
(フィリップ・ジュリアンの名著『世紀末の夢・象徴派芸術』の巻頭に引用された)