マルセル・プルースト(1871-1922) フランスの作家。二十世紀を代表する文学者の一人。 主著である大作『失われた時を求めて』は生前に4巻まで刊行された。死後、残された未定稿を遺族が整理して、5年後に全7巻で完結したものの、作者による修正作業は5巻の半ばまでしか行われていないため完成とはいいがたい。
10/16 の記事で、二酸化炭素が水に溶けたときの化学平衡のことを書きました。確認のため、もう一度まとめておきます: 4つの物質の濃度が2つの平衡定数により束縛されている 海洋気象観測船によって実際に測定されるパラメータは以下の4つです: pH の測定はムツカシイので、計算する方がヨイ 最初のは二酸化炭素分圧、溶解平衡の関係を示す式です。以下は、pH(水素イオン濃度指数)、溶存無機炭素(全炭酸)とアルカリ度(詳しくは、炭酸アルカリ度)です(≡ の記号は「定義」という意味)。これらをよーく見ると、上の枠内の (2), (3) の関係による束縛があるため、2つのパラメータをうまいこと組み合わせれば…
きちんと本が読めないのです あれよあれよと読んでしまう あれよあれよにも種類があるのです いやだ、ズルしちゃ駄目よという感じでしょうか 内容とか筋はどうでもいいです きちんと本が読めないのです 一日の大半を過ごす居間のテーブルには、PC脇に何冊かの本が置いてあるのですが、好きな本はこちらに目くばせを送っているように感じられることがあります。 『聖耳』、『魂の日』、『野川』、『仮往生伝試文』、『杳子・妻隠』。このところ古井由吉の本ばかり読んでいて、他の作家の本を手に取る気になりません。そういうふうに融通のきかないところが私の欠点なのです。それは分かっているつもりです。 私にはもう一つ欠点がありま…
アルベルチーヌも、祖母も、作曲家ヴァントゥイユも、作家ベルゴットも、多くの人物が死んでゆき、喪失の悲しみは深まります。コンブレも第一次世界大戦の戦闘地域になり、戦死者が多く出ます。パリもドイツ軍機による空襲に世界ではじめてさらされます。闇は深まり、黄昏めいた光が拡がります。 しかし、繰り返し味わう失望や無力感の流れに抵抗し逆行するようにして、母や祖母や恋人アルベルチーヌから、またヴァントゥイユの音楽やエルスチールの絵画から、またフランソワーズの料理や衣服などといった生活で発揮される巧みな腕前からさえも、新たな創造への呼びかけが聞こえてきます。身近な所で編まれる人との関係性から創造の萌芽が芽生え…
この長編小説では当初主要テーマとして照明を浴びて舞台前面を占めていたパリ社交界や恋愛模様が、読み進むにつれやがて少しずつその重要性を薄めてゆきます。反対にそうした全般的な流れに逆らうようにして、それまで目立たなかった脇役たちが舞台の袖から中央へと登場してきます。長く主役をはってきたものは翳り、それに代わりそれまで出番も少なく、役割も明確ではなかった端役たちが互いに関連を持ち始め、新たな役回りも得て、作家志望の主人公を創作へと導きます。 以下のⅢ章では、まず19世紀から20世紀に移る端境期のパリ貴族階級で起きる大きな変動を描きます。また、それとともに間欠的に起きる主人公マルセルの内面における大き…
第二篇「花咲く乙女たちのかげに」に恋人になるアルベルチーヌが登場します。彼女は英仏海峡を臨む保養地バルベックの海を背景にして現れる娘たちのグループのひとりです。女性もまたがるようになった自転車を好んでいて、その頬は冬の朝の輝きのように紅潮します。娘たちとイタチ回しという遊びをしていて彼女の手を握った時など、「無数の希望が一気に結晶する」のを感じ、「官能的なやさしさ」を主人公はおぼえます。しかし、彼女が下品な言い回しを使うのを耳にするうちに、グループの娘たちと同性愛的関係にあるのではないかと疑い始めます。しかし、彼女の姿は変化し続け、はっきりした像を結びません。 Bing image creat…
マルセル・プルースト(1871−1922)の長編小説「失われた時を求めて」は大伽藍に例えられることもあって、何やら近寄りがたい長編のように語られることがあります。しかし、その特有な展開の仕方に慣れれば、けっして難解な書物でも美の巨峰などでもありません。重要な場面もむしろ身近な所で繰り広げられることが多く、多彩なアプローチが可能な小説だということがわかるはずです。安定していた社会が傾く時の迫力に富む描写もあり、人生にうがたれる深淵をのぞきこむような場面も描かれはします。でも一方では、人間に秘められている可能性も繰り返し語られているし、親近感もユーモアも感じることができる小説です。それまでの近代小…
全国的に猛暑であるらしく、越谷とか京都に住む友人から、暑くておかしくなり そうとのメールが届いています。どちらも最後には、暑さに負けぬようにと記して あるのですが、ご心配無用でありまして、当地は著名な避暑地よりもさらに涼しい のでありました。 最高気温、昨日はちょっと高くて26度、本日は23度でありました。 来週にはインターハイのソフトテニスの全国大会が、当地で開催とのことですが、 たぶん熱中症の心配はいりませんでしょう。前回にインターハイ全国大会が開催 された(30年ちょっと前)時には、お天気がよろしくなくて最高気温が20度に 届かずで、全国から集合の選手たちは寒さに長袖シャツを求めて、衣料…
プルースト効果は、人が特定の香りや音楽などの感覚刺激を通じて、過去の思い出や記憶を鮮明に思い出す現象を指します。この効果は、フランスの作家マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』に由来しています。プルーストは、主人公がマドレーヌというお菓子を食べた瞬間に、幼少期の記憶が一気に蘇る場面を描写しています。 プルースト効果は、感覚刺激が人の記憶や感情に直接的な影響を与えることを示しており、感覚刺激によって過去の体験がよみがえるという特徴があります。この現象は、特定の香水の匂い、昔の曲のメロディ、特定の場所の風景など、様々な感覚刺激によって引き起こされることがあります。 プルースト効果は、感覚…
プルースト効果(Proust Effect)は、特定の刺激や体験によって過去の記憶や感情が鮮明に蘇り、強く体験される現象を指します。この用語は、フランスの作家マルセル・プルースト(Marcel Proust)の小説『失われた時を求めて』に由来しています。 プルースト効果は、特定の香り、音楽、風景、味、感触などの感覚的な刺激が、過去の出来事や情景と深く結びついている記憶を呼び起こすことを指します。この現象は、感覚器官を通じて刺激が脳に伝わることで、過去の情景や感情を直接的かつ強烈に再現するものと考えられています。 例えば、特定の香りが幼少期の思い出を鮮明に蘇らせたり、特定の曲が昔の感情や場面を思…
当方の親は転勤族でありましたので、小学校は入学したところは4年まで在籍し、 そのあと僻地の学校に転校して、そこを卒業しました。どちらも田舎の学校であり ましたが、幸いなことどちらも廃校になることなく、現在も残っています。 入学した小学校は、卒業してはいませんが学年一クラスであるせいもあって、 学校を離れて60年以上もたつというのに、いまも学年の集まりがある時には、 声をかけてくれます。ありがたきかなです。 ということで、本日はほんとうに久しぶりで小学校のクラスの集まりに参加です。 数年前にも参加しているので、すこしは顔と名前が一致するようにはなっているも のの、ほとんど浦島状態となります。 当…
・ナマ言ってすんません!!! shaker0831.hatenablog.com ・友達ができないだのごちゃごちゃ言ってましたが、今日無事に仲を深めてきました。昼までがっつり寝たあと、公園で遊ぼう!という誘いが全体ラインでポストされ、勇気を出して飛びついた。キャッチボールとサッカーを日が暮れるまでやる、という中学生みたいなことをして、多少なりとも心の距離が縮まったのではなかろうか。晩飯もいっしょに食えたし。 ・合わないだの言ってたけど、結局表層だけを見ていたからであって。人間関係の最初はみんなそりゃ表面のコミュニケーション、当たり障りのない話から始めるしかないのをわかってなかったな。そこはいっ…
25年ほど前、俺は世田谷区は祖師ヶ谷大蔵のアパートで一人暮らしをしていた。 時はバブル崩壊直後のこと。 当時すでにそう呼んでいたか、就職氷河期ど真ん中の世代である。 大学を除籍になり学生ではなくなったので労働する必要に迫られ、ある接客業に就いた。なぜ地元ではなく都内に就職したのかについては省略する。 会社は梅ヶ丘にあった。今だったら職場に近い梅ヶ丘で賃貸住宅を探しただろうが、なにぶん一人暮らし初心者である。溜まり場になったら嫌だとの陰キャ的発想から職場から少し離れた祖師ヶ谷大蔵に住むことにした(結局溜まり場にされるほどの親交を職場の誰とも結ぶことはなかった)。 職場はそこそこブラックだった。こ…
辻原登の本を中心としたエッセイ集、お よび昔のこと、父のこと等を思い出すエ ッセイも含む。 プルーストのことを書いているわけでは ない、でもむつかしい、博覧強記である、 なんとなく彼の小説のバックボーンを垣 間見ることとなった。 熊野でプルーストを読む (ちくま文庫 つ 17-1) 作者:辻原 登 筑摩書房 Amazon ktoshi.hatenablog.com
雪が溶けて風の匂いから湿り気が減ってくっるこの季節、アスパラガスが美味しくてえらいことである。 近所にある酪農学園直営の販売所で、週末ごとにとれたてのアスパラが入荷するのを、売り切れる前に毎週せっせと買いにいく。 寒冷地の地面から出てきたての若く柔らかい芽は糖度が高く、爽やかなとうもろこしみたいな味で、さっと茹でても、炒めても、とにかく余計なことさえしなければ絶対に美味しい。 もののレシピ本には「アスパラの根本は数センチは切って」などと記してあるものが多いが、雪国の地面で春を待ったアスパラガスの根本に捨てるところなど、全然ないのだ。 「アスパラガスって見た目も美しい上に美味くてすごい」というこ…
ドライなミシェル・ウエルベック作品『闘争領域の拡大』『素粒子』を読んだ反動で、急にウェットな文学の極致ともいえるマルセル・プルースト(1871年~1922年)の『失われた時を求めて』が読みたくなった。20世紀文学の最高峰の一つとされながら、あまりの長さに多くの人が途中で投げ出し、知名度のわりに完読した人が少ないという手ごわい作品だ。私もかつて途中までは読んだのだが、多くの人の例にもれず途中で投げ出している。今回もはたして完読できるかは分からないが、それならばそれで、ともかく途中まで読んで続きは持ち越しにすればよいという気持ちで読み始めた。翻訳はいくつかあるのだが、私が選んだのは高遠弘美氏訳の光…
17世紀オランダの画家フェルメールについてオデットはスワンに訊ねた。 この画家は女性のために苦しんだことがあるのかしら、女性からインスピレーションを与えられたことがあって?... スワンが、実は、わかっていないというと、彼女はフェルメールに興味を失っていた。 オデットはよく、こんなことを云ったものだ。 詩より美しいものはないかもしれない。でも、詩が真実で書いてあればの話。詩人というのは欲の突っ張ったひとが多いのよ。・・詩の中で愛だの星だの書いていると、其れに騙され30万フランものお金を取られてしまったお友達もいるわ。 スワンが芸術の美しさと、詩や絵画をどう鑑賞すべきか云おうとすると、オデットは…
もう2年も前に人生やり残したことは「失われた時を求めて」プルースト著を読了する事かもしれないって、背水の陣のつもりで岩波文庫全14巻を揃えた。でも例によって挫折による挫折、牛歩に次ぐ牛歩、それでも諦めずに最近また読み始めている。フランスの人名も地名もちっとも頭に入らないし文章は流れない、それでも少しづつ少しづつ電車の中でベッドの上で読み続けていたら、ようやく波に乗れつつある。最近読んだ「本は眺めたり触ったりが楽しい」と言う本の中に「本の良し悪しは重量で決まり、厚い本がいい本だった」と言うことが書いてあって、僕の貧しい読書人生を振り返って、なるほどなぁそうかもしれないと妙に納得したのだった。「失…
日系ブラジル人日本語作家松井太郎『うつろ舟』を読み、その解説者のひとり、細川周平さんの著書のこれをちゃんと読んでいなかったので読みました。 サンバの国に演歌は流れる : 音楽にみる日系ブラジル移民史 (中公新書) | NDLサーチ | 国立国会図書館 思わぬところに的確な批評があって、下記サイトの評が素晴らしかったです。どういうサイトなのか知りませんが、本書の特質を短い文章で浮き彫りにした炯眼に敬服。 日系ブラジル人コミュニティーに <型> としての音楽の有り様を見出し、A・J・エリス以降面々と受け継がれてきた <民俗音楽学的手法> に引導を渡す名著。 なぜ日系移民がアルゼンチン・タンゴに代表…
1時間はただの1時間ではない。 それはさまざまな香り、音、計画、気候がいっぱいにつまった瓷(カメ)だ。 ―マルセル・プルースト 今日はハリラヤ! ムスリムのビッグセレモニーにつき、シンガポールは祝日✨🌚 蒸し暑い空気にあえぎながら、山登りに行ってきたよ。 途中の看板にEXITまで500メートルってあるから、なんだあと少し!と思って進めば、ま〜大変。 急斜面の階段登って降りて。 膝が笑うぜ。 あの「出口までの距離」ってのは、平面に書き起こした地図上の距離のことなんだな。 その500メートルは、たしかに地点Aから地点Bまでの500メートルなんだけど、実際に歩く険しい階段の高低差は含まれていない。 …
実家の法事で、小学生がいる親戚三軒に「一家に一冊、吉四六さん」と、挿絵も楽しい吉四六さんのとんち話を配った。吉四六さんは、実家のある臼杵に伝わる「こしきい」お百姓さんの話。頓知話が面白く、子供の頃、年寄りに話をせがんだものだ。 親戚の子供たちは、田舎のお百姓さんの話など好きではないかもしれないが、大人になって社会で辛い目に遭った時、家に吉四六さんの本があることを思い出して、ちょっとだけ笑ってくれたらそれで良い。 三年前から、ボランティアで電話による心の悩み相談をやらせてもらっている。相談者とは一期一会。すぐに答えは見つからないが、あの本に答えがあるのにと思うことがある。図書館や書店の棚の前をウ…
日本語 記憶関連語 38種類プラス 日本語 記憶 memory・remember・memorize・recollection・reminiscence 記憶欠損 memory deficit 記憶減退 hypomnesia 記憶亢進 hypermnesia 記憶固定 memory consolidation 記憶痕跡 memory trace engram 記憶再固定 memory reconsolidation 記憶錯誤 paramnesia 記憶障害 dysmnesia memory impairment impaired memory memory disorder memory dis…
悪い夢ならば早めにさめてと 気さくな英語話者の隣人がエレベーターに乗りこんできて、中西部のままならない天気について会話を切り出そうとするなか、父は11と18(そこが口数の多いアメリカ人の行き先だった))のボタンを押しつづけていた――あたかも、それがこのクソみたいな多言語世界を終焉させ、バベルの塔なんてものが愚かにも建てられたせいで歴史が間違った非人間的な方向へとほどけだす以前に私たちみんなを連れ戻してくれるボタンであるかのように。(p.118) <<感想>> 当ブログでアレクサンドル・ヘモンの作品を取り上げるのは二回目。この作家の『愛と障害』【過去記事】の感想を書いたことがある。 『愛と障害』…
サガンの言葉 (だいわ文庫) 作者:山口 路子 大和書房 Amazon 幸福なときが正しくて、不幸なときは間違ってる。 1935年、フランス生まれ。 18歳で書いた「悲しみよ こんにちは」が大ヒット。364億円の印税。すごー。 サガニスト、サガンの真似するファンたちのこと。どうしても佐賀って漢字変換しちゃう九州人。 とにかく知性の人。 陽気でいることは一種の礼儀。 精神的な自立とは頭の筋肉を働かせること。鍛えないとにぶっちゃうもんね。 過剰よりも不十分なほうがもっと悪い。 破滅するのは私の自由です。 人は他人の自由を冒さない限り自由。 ふたりの関係が終わったというときは退屈だと思ったとき。 寛…
過去1年間、余暇のかなりの時間を美術館(博物館)で過ごしていた。 人生でこれほどミュージアムに通いつめたのは初めてだ。 コンサートに行くこともあったが、断然ミュージアム体験の方が濃くなっていた。 「芸術」という括りで考えると、成人する頃までは「音楽」、学生時代は「文学」、そして最初のキャリアチェンジ(ほぼ失敗に終わったのだが)で携わったのは「美術」だった。 その後は芸術とはあまり関係のない仕事をしてきた。 仕事以外では、趣味として一番時間を割いてきたのはスポーツだった。だから「芸術」とはうっすらした関係しかないような気分で過ごしてきた。 それがここにきて「美術」にどハマりして自分でも驚いている…
1909年から1929年にかけてパリで席巻したロシアのバレエ団「バレエ・リュス」について、舞台芸術のカラー図版を大量に交えて紹介する本。 バレエ・リュスについては、ピカソが舞台美術を描いていた、ということくらいは知っていたのが、逆に言うとそれ以上のことはよく知らず、なんでピカソがロシアのバレエ団の舞台美術をやってたんだ、というぼんやりとした謎であった。 ただ、最近、改めてこの時代について調べようと思ったときに、明らかに重要な存在だなと気づき、この本を読むことにした。また、 青柳いずみこ『パリの音楽サロン――ベルエポックから狂乱の時代まで』 - logical cypher scape2、海野弘…