長生きなピアニストは多い。90越えで演奏会を開いた、ルービンシュタイン、ホルショフスキー、プレスラーは特別としても、80越えのアシュケナージ、ポリーニ、アルゲリッチなどまだまだ元気の様子。少なくとも認知症になったピアニストは聞かない。 ピアニストの作業を分解してみると、楽譜を鍵盤に移すのは声を出して本を読むようなものだが、出てくる音を自分の思うように奏でるところは、声楽家にも似ている。楽譜を読んで頭の中で音楽を膨らませ、実際に演奏する際には複雑な和音や声部進行を一部覚えなければならないので、記銘力の訓練にもなる。 肉体的には自然で疲れにくい座位の姿勢ではあるが、野球のピッチャーのように腕と手首…