原 雅明 スクエアプッシャーが率いていたショバリーダー・ワンという覆面バンドを覚えているだろうか。ベーシストでもあるスクエアプッシャーは“バンドは窮屈なものだとずっと思ってきた”と長年一人で音作りを続けたが、このバンドの活動には珍しく力を入れた。彼がメンバーとして起用したのは、トロイカ(Troyka)というギター、オルガン、ドラムのトリオだった。ロンドンで活動するジャズを出自とする確かな腕を持つプレイヤーたちで、そこでグルービーなオルガンを弾いていたのが、キット・ダウンズだった。もう10年以上前の話だ。 ダウンズは、今ではヨーロッパで最も注目されるピアニストの一人であり、パイプオルガン奏者とし…