(本書の結末を明らかにしています。) 『死のとがめ』[i]は『メリー・ウィドウの航海』[ii]に続く、ニコラス・ブレイクの長編ミステリだが、前作同様の犯人当て小説で、しかし、印象は対照的である。 『メリー・ウィドウの航海』は、エーゲ海クルーズ船を舞台にした、極めてトリッキーで華麗なパズル・ミステリだったが、本書は、ロンドンのテムズ川沿いの一画で起こる連続殺人を暗い淀んだ空気の中で描いた現実味の強いミステリである。 1950年代のブレイクは、『呪われた穴』[iii](1953年、犯人当てミステリ)、『闇のささやき』[iv](1954年、スパイ・スリラー)、『くもの巣』[v](1956年、犯罪実話…