死にそうな昆虫を拾っては、一宿一飯を用意し、手厚く介抱して看取る。もう見送るのは、これで最後と思いながら。いつしかお墓が増えてきた。 たった1日だけの関係でも情は移るのだと思った。「名前」などつけてしまったら、もっと大変だ。 大切なものが奪われることに耐えうる心がない。自分がそういう人間だと知っていた。 こんなことでは、生きていくことは出来ないとそう思った。 どれだけ亡骸を弔っても、「死」は慣れてなどくれない。「死」は、それぞれが独立をしていて、「数」ではないのだと思った。 数ではないから、加算することは出来ない。同じ「死」はこの世に1つとして存在しなかった。この手にある、小さな蛾の命にも、身…