《そもそも人間にはいかほど智恵があっても、その人情に親切なる所がないと、その智恵は悪智悪覚に帰し、悪いことをして人を害し、身を賊(そこな)うに終るペし。ゆえに余は人を便うにしても、智恵の多き人よりも人情に厚き人を選んで、採用しています。孝悌(こうてい)の道に厚く親兄弟に親切な心のある人を好んで採ります。そういう人の中でも、千に1つは悪いことをする者がないとはいえないが、まず安心して使うことができます》(渋沢栄一『論語講義(1)』(講談社学術文庫)、p. 32) たとえどんなに知識があり有能であったとしても、その知識と能力の使い方を誤れば有害無益である。害をなすことに有能さを発揮するのだからかえ…