序文・秋の日の夕暮れ 堀口尚次 「釣瓶(つるべ)落とし」または「釣瓶下(お)ろし」とは、京都府、滋賀県、岐阜県、愛知県、和歌山県などに伝わる妖怪。木の上から落ちて来て、人間を襲う、人間を食べるなどといわれる。 大正時代の郷土研究資料『口丹波口碑集』にある口丹波〈京都府丹波地方南部〉の口承(こうしょう)によれば、京都府曽我部村字法貴〈現・亀岡市曽我部町〉では、釣瓶下ろしはカヤの木の上から突然落ちてきてゲラゲラと笑い出し、「夜業すんだか、釣瓶下ろそか、ぎいぎい」と言って再び木の上に上がっていくといわれる。また曽我部村の字寺でいう釣瓶下ろしは、古い松の木から生首が降りてきて人を喰らい、飽食するのか当…