朝寝は長く、寝ぼけまなこで時間を確認する。ヤバい!講演会に遅れる。身支度を整える間もなく、蒲田から春日を目指す。 保江邦夫氏の家元放談会、霊性の向上をテーマに、2時間の独演を行うそうな。著書によく出る秘書の暖かな受付を経て、保江邦夫の登壇を待つ。 彼は嫌いだった。武術の鍛錬を始めて、図書館の蔵書を漁り散らかしていた時分、彼の存在を知った。当時、憧れは高松寿嗣やら、牛島辰熊、一瞥で人間を殺傷しうるほどの殺気を求めて、鍛錬を積んでいたため、彼ののほほんとしたテキトウな雰囲気は、軽蔑と嫌悪、道を同じくする者として、覚悟と気合い、それより生まれうる覇気に、豪気に欠けて、嘲ったのち眼中から消えた。 が、…