(3月30日と31日に京都で行うワークショップのメモ②) 何度も書いてきたことだけれど、「源氏物語」というのは、11世紀の初頭に突然出てきた創作物ではなく、こういう文学が創造されるまでの歴史的な準備期間があった。 源氏物語の100年前、10世紀の初頭、紀貫之によって古今和歌集が編纂されたことは、一つの起点であった。 8世紀に律令制が始まる前、「歌」というのは、人間社会の事情を超えたところにアクセスするための魂の運動だった。しかし、律令制が始まってからは、少しずつ、歌が、身辺雑記風になっていき、自然を愛でる場合も、個人的な感慨にすぎなくなっていく。それは万葉集の前期と後期の変化に表れており、前期…