浜松の典昭堂で、ウォルター・リップマンの『世論』を入手した。しかもそれは裸本で、背タイトルの旧字の『與論』がかろうじて読める一冊だった。それだけでなく、版元は大日本文明協会で、『近代出版史探索Ⅲ』569などの「大日本文明協会叢書」の一冊として、大正十二年十月に刊行されていたことになる。同協会と理事長、その「叢書」に関しては拙稿「市島春城と出版事業」(『古本探究』所収)、編輯長浮田和民は『同Ⅳ』666、編輯理事の宮島新三郎は『同Ⅲ』555を参照されたい。 やはり浮田のところで、大正十一年に大日本文明協会からルドルフ・シユタイナーの『三重組織の国家』が翻訳されていたことを取り上げておいたが、リップ…