「不義はお家の御法度」だった江戸時代.それは人妻だけでなく娘が自由に恋することもできない厳しい封建制度の中で,掟にそむいて「愛」を貫き通した,お七,お夏,おさんの生きざまを描く人間賛歌――. 井原西鶴が41歳で発表した浮世草子の処女作『好色一代男』以来,男女の性愛を扇情的に描く「好色本」が町人文化に華を添えた.巻一「姿姫路清十郎物語」.巻二「情を入し樽屋物語」.巻三「中段に見る暦屋物語」.巻四「恋草からげし八百屋物語」.巻五「恋の山源五兵衛物語」. 打首,島流し,自害,磔刑が待ち受ける悲恋に身を投ずる女性の烈しさ,封建道徳制度と対決し,死にゆく中に恋々たる姿.それらが渾然一体となって,あはれを…