丸の内勤めの杉山(池部良)は、一児を亡くしてから妻・昌子(淡島千景)との関係に隙間風が吹くようになっていた。キンギョという綽名の若い女性(岸恵子)と不倫関係にある彼だったが・・・。 小津安二郎が『東京物語』(1953)に次いで発表した映画『早春』(1956)は、夫婦を主題にしたいくつかの小津作品の中でも最も深刻な色合いを帯びた作品の一つだ。 小津の戦争体験が今作には特に色濃く反映されていると言われており、復員兵の池部良は疲れ果て、未来に希望を持つことが出来ない。 本作に続く作品『東京暮色』(1957)も、『早春』同様、脚本の野田高梧とのコンビによるものだが、『早春』以上に救いのない物語である。…