第1章 出会い -新幹線「のぞみ」車内- 初夏の陽光が眩い日。新大阪駅を発車した新幹線「のぞみ」の車内に、中年男・木村泰三はぼんやりと車窓を眺めていた。酒浸りの生活でやつれた顔には、殺し屋だった頃の鋭い眼光は見られない。今はただ、どこか虚ろな目をしている。 そんな彼の隣に、1人の中学生が座っていた。整った顔立ちに眼鏡をかけ、本を読みふけるその少年は、自らを「王子」と名乗った。 「この列車には、殺し屋が乗っている」 王子は、本のページをめくりながら、不敵な笑みを浮かべる。 「あなたも、元殺し屋でしょう?その目は、人を殺めた者の目だ。今は酒に溺れているようだが」 木村は驚き、そして警戒心を露わにし…