日本酒の仕込みは三回に分けて仕込まれます。三段仕込みといわれています。酛(もと)に対して、麹・蒸米・仕込み水を同量づつ3回に分けて仕込むわけではありません。酛に対して倍々に増してゆくやり方です。
酛に大量の麹・蒸米・仕込み水を一度に加えると、酵母の密度と酸濃度が一気に薄められて雑菌の繁殖に都合がよい環境になります。せっかく酛で大事に増やした酵母より、それ以外の細菌が繁殖します。
そこで、まず、出来上がった酛を枝桶といわれる酛タンクより大き目のタンクに入れ、そこに酛の約2倍量の麹・蒸米・仕込み水を入れます。これを「添仕込み」といいます。こうすれば、酛の酵母や酸の薄められ方は小さくてすみます。その翌日は「踊り」といって、一日仕込みを休み、その間に酵母の増殖をはかり、酵母増殖の勢いをつけます。その翌日、「踊り」を大きなタンクに移してから「仲仕込み」、翌々日の「留仕込み」をします。そうすることによって、酸が薄まっても、雑菌はほとんど入り込まないのです。
この三段仕込みは、菌学的にみても、全く理にかなった方法です。微生物という概念が無かった江戸時代にはすでに三段仕込みで酒を造っていたそうです。昔の人は経験と勘だけをたよりにすごいことをしていたのですね。