前回、『出版人物事典』の小森田一記の立項において、彼が横浜事件で検挙されたことを見ている。この横浜事件はいわば出版業界の大逆事件と称すべきもので、本探索でも取り上げておかなければならない事件であり、ここで書いておきたい。 横浜事件は大東亜戦争下における著者と雑誌から始まり、いくつかの出版社と多くの編集者が連鎖し、獄死者たちも生じたフレームアップ事件だったことで、戦後の事典類にも立項されている。だがここでは出版業界の事件として捉えたいので、まず『日本出版百年史年表』を繰ってみる。ただ同書に事項索引はないので、年表から事件の推移を抽出し、クロニクルとして追う必要があり、それを示す。 *昭和17・9…