小柳もまた、石原の「のちの散文の仕事はあくまで詩の付録だと思っている」と言ったが、小柳の「付録」は、吉本の「虚偽=余計」とは決定的に異なっている。小柳は最初から、石原の詩の言葉は「地下に測り知れない泥沼を抱えて」おり、「言葉たちは地底の闇を吸いあげている」ことを感受していた。そして「おそらく石原吉郎の地下世界は性の欲望ばかりではない、シベリア時代の泥沼がせめぎあっていたことだろう」と。いわば「付録」は後から付加された「余計」ではなく、最初から「地下=闇」として伏在していたのだ、と。 小柳が特異なのは、石原に「形式」の上で散文(化)の「過程=行方」の「ワナ」を見出し、散文を詩の「付録」と見なしな…