本書は文庫本ながら400頁近いボリュウムがあって、全部読むとさすがに食傷します。同じテーマの繰り返しが多いのも煩わしい。 それにしても凄い食通ぶりです。食材を見分ける眼の鋭さ、執拗なまでの研究心、パッとひらめくレシピのアイデア、卓越した審美眼、彼に勝るグルメ=料理人は今後出てこないと断言しても良いくらいです。 料理人の頂点に立って「自分より才能のある人物はいない」といい、美味しい食事に興味のない人間をバカにしている。こんなエグイこと、普通は書けませんけどね。自称「食通」の金持ちや有名人もカス呼ばわりです。かくして彼のつくる数々の料理は上流階級の面々を感激させ、一方でその狷介な性格は嫌われた。天…