いつものように、さまざまな媒体に寄稿した文章を集めたコンピレーション本である。多くは、いつか読んだような内容である。でも、読みやすいし、まあ面白い。ウクライナ紛争に対する見方には賛成しないけどね。 でも、中でも興味深く読んだのは、「セックスワーク」という論考。もう20年も前に寄稿した「岩波 応用倫理学講座」に所収された論文だが、売春の是非と、売春婦の人権は分けて考えるべき、というのは全くそのとおり。また、「新潮45」に寄稿した「『危機』について」という論考も興味深い。この中に、「ランティエ」に関して説明する部分がある。 「年金生活者」のことだが、20世紀初頭までのヨーロッパの芸術や文化、科学な…