(昨日の続き) 世界中の文学のルーツには悲劇がある。悲劇には、人間の心の深いところを揺さぶる力がある。だから後々まで伝承され、記憶が引き継がれる。 現代社会のように、人間の欲望を刺激するものが溢れ、悩みや不安を一時的に紛らわす娯楽に不自由しない状況でも、人のために尽くすことを願う人たちも多い。 欧米風に表現することが好まれる現代では、「コンパッション」という言葉が使われる。これは、相手を深く理解し、相手の役に立ちたいという純粋な思いを持ち、相手と共にある力のこと。 古代においても、この「コンパッション」の道を歩むものがいて、それが巫であった。 古事記において登場する女性の多くは、この巫であり、…