五 遊牧民族の時代Ⅰ (2)北魏の覇権 鮮卑慕容部に続いて勢力を伸張させてきたのは、同じ鮮卑系部族の拓跋部である。拓跋部は内モンゴルのフフホトを根拠地とする部族集団であったが、4世紀初頭に西晋を助けて匈奴系の前趙と交戦した功績で華北に領土を安堵されたことが飛躍の土台となった。 かれらは五胡十六国時代の初め、315年に代を建国した。代も五胡十六国の一つに数えられるが、華北の辺境領主的な位置にあったうえ、内紛が多く、60年ほどしか続かなかった。それでも、万里の内長城域まで領土の割譲を受け、華北の広い領域を領有したほか、未完に終わったとはいえ、漢化政策を進め、後継国家・北魏の基礎を築いた。 代が氐族…