『友よ、さらば 弔辞大全Ⅰ』/開高健・編/新潮文庫/昭和61年刊 『神とともに行け 弔辞大全Ⅱ』/開高健・編/新潮文庫/昭和61年刊 15年前に少々変わったなりゆきで、物故した陶芸家の追悼文を書いたことは前回に記した。当時その種類の原稿を書いたことのなかった私がまず参考にしたのが、開高健の編集による『友よ、さらば』『神とともに行け』だった。明治から昭和にかけての追悼文の選集で、たとえば昭和17年に萩原朔太郎への追悼を三好達治が書き、昭和39年には三好達治への追悼を中野重治が、昭和54年には中野重治への追悼を佐多稲子が書いている。勝者も敗者もない懸命なリレーのようでもあり、時の奔流に言葉が浮かび…