近隣(チカドナリ)の翁の訪来(トイキ)て、都は花の真盛(マサカリ)ならむ、一とせ京都(ミヤコ)の春にあひて、嵐の山の花をきのふけふ見し事あり、何事も花のみやこ也とて去ぬ。 数多杵(アマタギネ)てふものして餅搗(モチツキ)ざわめきわたりぬ。 けふも祝ふ事あり。 日暮(ヒクレ)れば某都(ナニイチ)某都(クレイチ)とて両人(フタリ)相やどりせし盲瞽法師(メシヒノホフシ)、三絃(サムセム)あなぐりいでてひきたつれば、童どもさし出て、浄瑠璃(ゾウルリ)なぢよにすべい、それやめて、むかし/\語れといへば、何むかしがよからむといふに、いろりのはしに在りて家室(イへトジ)のいふ、琵琵琶に磨碓(スルス)でも語ら…