前々回の石垣綾子『わが愛、わがアメリカ』における彼女の自由学園をめぐる回想を読むと、あらためて大正時代において、新たなる学校や雑誌、思想や文化が立ち上がってきたことが臨場感をもって浮かび上がってくる。彼女はその時代の只中を通過してきたのだ。 それは『近代出版史探索Ⅱ』228の羽仁もと子による『婦人之友」創刊や自由学園の創設などに象徴的で、その学習は実生活に基づくものをめざし、一泊の取材旅行をさせ、レポートを書かせたりした。石垣の場合は近江ミッションで、宣教師ヴォーリスの営むメンソレータム会社による収益を投じる社会福祉事業が対象だった。そうしたレポート活動は自由学園の卒業生を婦人之友社の記者とし…