記憶の初めは何歳くらいからなのだろうか。生まれたときのことを覚えているという人のことをどこかで読んだことがあるが、これは眉唾物として、私の場合は4歳くらいである。冬の夕方、私が何か親の言うことを聞かずごねていたのであろう。いきなり父が私を抱きかかえ、縁側の雨戸を開け、雪の降り積もっていた庭に放り投げたのである。未だ根雪が降り積もる前で、多分12月頃のような気がする。柔らかな粉雪の中でもがいたのをかすかに覚えている。白い雪の粉末が顔や首にまといついた。父は厳しい人だったが、物分かりはよく、子供たちには公正な人だった。この時は口で言ってもダメ、よほど私の態度を腹にすえかねたのであろう。いつか、どん…