『対話 魂ッコの旅 森崎和江 野添憲治』より ◆北へと向かう心 どうして北に行きたいということになるのかなというとね、私、「辺境」という言葉が嫌いなんです。だってどの地方にも固有の生活史はあるんですもの。それぞれの地域にくらしの遺産は深く残っているはずですけど、地域的個性はどんどんくすれていってる。そのこわされずに残っているところに行きたいわけ。そうだとすると、北の端のほうをえらびたくなるんです。そこは「辺境」というより、地域の個性が生きてるところだっていう気がするわけですよ。野添さんのご本などを拝見していますと、そういう生きてるところに行って、もし私にも何かが感じとれるなら、今度は三〇年はか…