霊能真柱。上下卷、文化9年脱稿、10年刊。
平田篤胤が確信をもって古神道世界観を世に問う書。
天・地・泉からなる宇宙の成立過程を図解した服部中庸の『三大考』を下敷としたもの。が、本居宣長の門人の間では師の古道説を逸脱する内容だと批評した。
本書は『古事記』以外、平田篤胤自ら撰定した『古史成文』、『古史伝』もをもとに古道を論じた。
要する、本居宣長の説と一番違うのは、人間死後の霊の行方の安定こと「死後安心論」である。本居宣長の学説のよって、人間が死ぬと善人・悪人の区別なく汚れた「夜見の国」へ行くしとしが、平田篤胤の学説は大違う。死後の霊魂は大国主神の主宰する幽冥界へおきむき、そこで審判を受け、現世に残された親類縁者を守りつづけるという結論を導き出すに至る。
儒教、道教またほか数宗教の世界観を取り込めて、神道の宗教観を完成させる著作でもいえる。
なお、論理的本書を完成したあと平田篤胤が本格的に幽冥界の考証を始める。