今秋とある新本屋に立寄ったところ、白水Uブックスの創刊40年を記念するフェアが展開されており、そこにイーヴリン・ウォー/吉田健一=訳『黒いいたずら』が出ていたので愕いた。長らく版元品切れとなっていたはずの本であった。 奥付をみると、「1984年11月10日 第1刷発行/2023年6月15日 第2刷発行」となっていた(このたび「オンデマンド印刷・製本で製作され」たものと云う)から、かなり長い間増刷されることなく品切れになっていたものとおもわれる。この本は、もともと吉田健一が1964年に訳出したもので、訳者解説の末尾にも「昭和三十九年七月」とある。 同書の存在をはじめに知ったのは、小林信彦『本は寝…