晴、寒し。藝術愛好者が人間性を失ふてふアイロニー。 私は護国寺西の交叉点にゐた。上のはうから2人の男が歩いて来た。青年といふには弱弱しく、少年といふには逞しい感じがした。1人は盲か、目を病んでゐるらしく、もう1人を頼り、腕を組んで歩いてゐた。2人は兄弟か、はた友人か。それさへも明らかではなかつたが、すべての十代の特権として、恋愛のことを愉しげに語り合ひ乍ら歩いてゐた。 交叉点の角には焼鳥屋があつた。2人はその前を通るとき、少し逡巡する様子を見せたが、そのまま歩いて去つて行つた。金がないといふ言葉が私には聞こえた。だが暫くして戻つて来た。彼らは焼鳥屋のケースの前で悩んだ末に、モモとタンを1本ずつ…