* 村上春樹の代名詞 村上春樹氏は河合隼雄氏との対談集『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』(1996)において小説を書き始めたきっかけは、いま思えば「自己治療のステップ」であったと振り返っています。周知のように村上氏は1978年、29歳のある日、明治神宮球場でビールを飲みながらヤクルトスワローズの試合を観戦していた最中に突然「そうだ、小説を書こう」という天啓が閃き、当時経営していたジャズ喫茶「ピーター・キャット」を切り盛りする傍らで毎日細切れの時間を見つけては小説を書くようになります。その結果生まれたデビュー作『風の歌を聴け』(1979)について氏は同対談において「文章としてはアフォリズムという…