「たすけて」 主人公は時々だれもいないところで、そのように呟いたり、思ったりする。 そしてその度に、僕は、震えるのだった。 ああ、彼女は僕だ。 その瞬間だけ僕は野崎泉なのだ。 角田光代『あしたはうんと遠くへ行こう』(角川書店 2005年)の話をさせて下さい。 【あらすじ】 泉は田舎の温泉町から東京に出てきた女の子。 「今度こそ幸せになりたい」ーーーそう願って恋愛しているだけなのに。 なんでこんなに失敗ばかりするんだろ。 アイルランドを自転車で旅したり、ニュー・エイジにはまったり、ストーカーに追いかけられた莉、子供を誘拐したり・・・。 波乱万丈な恋愛生活の果てに泉は幸せな”あした”に辿り着くこと…