住み馴れるにしたがって ますます凄い気のする山荘に待つ恋人などというものは、 この源氏ほどの深い愛情を持たない相手をも 引きつける力があるであろうと思われる。 ましてたまさかに逢えたことで、 恨めしい因縁のさすがに浅くないことも思って歎く女は どう取り扱っていいかと、 源氏は力限りの愛撫を試みて慰めるばかりであった。 木の繁《しげ》った中からさす篝《かがり》の光が 流れの蛍と同じように見える庭もおもしろかった。 「過去に寂しい生活の経験をしていなかったら、 私もこの山荘で逢うことが心細くばかり思われることだろう」 と源氏が言うと、 「いさりせし かげ忘られぬ 篝火《かがりび》は 身のうき船や …