「外黒さん、今日はこれからどうするんですか」「家に帰って、風呂に入って、本読んで寝るだけだよ」「ああ、どんな本読んでるんですか」「アーシュラ・K・ル=グウィンのいまファンタジーにできること」「え?」「アーシュラ・K・ル=グウィンの、いまファンタジーにできること」 後輩さんは戸惑ったような笑みを浮かべ、「外黒さんて、そういう本も読むんですね!」と言った。 あまり時間がなかったので「ふふふ、まあね」と返事をして、私は家に帰った。 電車に乗って帰っている間、“そういう本”って、どういう意味だろうと思った。 後輩さんは『いまファンタジーにできること』を、おそらく読んだことがないと思う。 読んだことのな…