経済小説・お仕事小説に登場する組織と言うと、多くの場合、企業・地方自治体・公的機関など、実在の組織が想定されています。が、「架空の組織」もしくは「公にはされていない極秘組織」といった、「謎めいた組織」が描かれるケースがないわけではありません。その場合、リアリティが希薄になるのを避けるための工夫が、著者に求められることになります。今回は、そうした謎めいた「極秘組織」に焦点を合わせた二つの作品を紹介します。「極秘組織を扱った作品」の第一弾は、安達瑶『内閣裏官房』(祥伝社文庫、2020年)。内閣官房長官を補佐するのは、3人の副長官。副長官のうち、二人は政治家で、一人が官僚出身者です。本書で登場するの…